
加納朋子 著
「モノレールねこ」
(文春文庫)
ぼくの家に心地よさ気に居座るようになったデブでちょっとブサイクな野良猫は、あるとき首輪をしてやって来た。ぼくはふと思いついて首輪にそっと手紙を挟み込んでみた。“このねこのなまえはなんですか?”数日後戻って来た猫の首輪には返事があった。そしてぼくはタカキと文通を始めた。−「モノレールねこ」他「パズルの中の犬」「マイ・フーリッシュ・アンクル」「シンデレラのお城」「セイムタイム・ネクストイヤー」「ちょうちょう」「ポトスの樹」「バルタン最期の日」計8編収録
小学生のぼくは、家にやって来たノラ猫の堂々とした態度に惹かれていきます。あるときそのねこが首輪をしているのに気づき、そっと手紙を挟み込みました。
「このねこのなまえはなんですか?」
帰ってきた返事は「モノレールねこ」というものでした。この名前を聞いて思わず納得し、感心したぼくは、それからも首輪に手紙を挟み続け、文通が始まりました。
そんなある日、モノレールねこが変わり果てた姿で発見され・・。当然、文通は自然と終わってしまいました。
そしてぼくは大人になり、就職した会社である女性と出会います。
とても不思議な雰囲気のモノレールねこ。このねこのお陰で見たことのない友だちができたぼく。でも文通相手のタカキはとてもクールで、短い文章の返事しかくれません。いつか会ってあそびたかったのに、どこに住んでいるのかわからないままで、会えずに終わってしまいます。
でも結末はちょっと幸せの予感・・。
この本には、家族などを亡くしたり、それ以外にも過去を無くしたり、様々な物を無くして悲しい気持ちを抱えた人の話が詰まっています。
何度も泣かされました。特に「セイムタイム・ネクストイヤー」は人の優しい気持ちが溢れていて号泣・・。
そして「バルタン最期の日」ザリガニが“俺”として語り部となるこの話。フータという少年に釣り上げられ、飼われる所から話は始まります。初めは迷惑な存在として家庭に入ったザリガニでしたが、フータだけでなく父親も母親もザリガニに話しかけるようになります。
この家族はお互いを思いやるあまり自分の悩みを話さないのですが、ザリガニには話すのです。でも何もできない俺。そして最期には・・・。
まさかザリガニに泣かされるとは

クスッと笑ったり、号泣したり忙しい話ばかりですが、最後には必ずほんわかと優しい気持ちになれる、そんな本でした。
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