
池波正太郎 著
「鬼平犯科帳17 特別長編 鬼火」
(文春文庫)
名前もない小さな居酒屋があった。地元の人たちが「権兵衛酒屋」と呼ぶこの居酒屋に平蔵が立ち寄った夜、事件が起きた。権兵衛酒屋の女房が斬られ、主人が失踪したのだ。女房・お浜は取り調べで自分の名前は告げても、亭主の名前は「権兵衛」だとしか言わず、他のことは一切口をつぐんだままだった。そして、事件を調べる平蔵に刺客が襲いかかる・・。
出だしの文章から、一気に引き込まれる作品です。
その日。
その夜。
その、小さな居酒屋へ、火付盗賊改方の長官・長谷川平蔵が立ち寄らなかったら、事件は別のかたちで進行し、おそらく平蔵の目にも耳にも触れることなく、すべてが闇の幕に閉ざされた向こう側で起り、人知れず終りを告げていたやも知れぬ。
さすがにうまいですね〜。
何気ない行動にも意味があるというか、人の選択や行動には必ず意味があるんだ・・と思わされますし、今回、平蔵が関わった事件はどんな人間の闇を背負っているんだろう?と一気に興味がわきます。
従兄の仙右衛門から「権兵衛酒屋」のことを聞いた平蔵は、その夜、寄ってみることにしたのでした。
うまい酒を飲ませるが、亭主も女房もほとんど口をきかないし、愛想もない。でも雰囲気が良い。亭主は多分、昔武士だったと思う。・・そんな話を聞いたら平蔵が行ってみようと思うのは当然のことです。
ところが、店のそばで見張っているらしき人の姿を発見し、帰ったふりをして戻った平蔵の前で、女房が斬られてしまいます。思わず身分と名前を名乗った平蔵。それを聞いた曲者たちはあわてて逃げだします。
曲者だけではなく、亭主まで逃げてしまったので、事件は大きな疑問をはらむことに・・。
事件を捜査し始めるのですが、二人の身元を探っていたときに聞き込んだ人が殺害され、更には平蔵も襲われてしまいます。
平蔵の身分を聞いて逃げ出したということは、曲者は盗賊?という推理ができるわけですが、亭主が元武士と思われるため、謎がどんどん深まります。
さすが長編。読み応え十分な作品です。
<鬼平犯科帳>
「鬼平犯科帳1」
「鬼平犯科帳2」
「鬼平犯科帳3」
「鬼平犯科帳4」
「鬼平犯科帳5」
「鬼平犯科帳6」
「鬼平犯科帳7」
「鬼平犯科帳8」
「鬼平犯科帳9」
「鬼平犯科帳11」
「鬼平犯科帳12」
「鬼平犯科帳13」
「鬼平犯科帳14」
「鬼平犯科帳15」
「鬼平犯科帳16」
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