
池波正太郎 著
「鬼平犯科帳16」
(文春文庫)
小柳同心は、同僚の黒沢同心が女賊“網虫のお吉”と歩いているのを見かけ、何となく後をつけた。すると二人は出会茶屋へ入ったのだった。黒澤同心の行動に不信感を抱いた小柳は、長官に報告し、二人で密かに捜査を始める。−「網虫のお吉」他「影法師」「白根の万左衛門」「火つけ船頭」「見張りの糸」「霜夜」計6編収録
網虫というのは字で何となくわかるでしょうが、蜘蛛のことです。蜘蛛のように相手をからめとるようなタイプの女賊だったお吉を、黒沢同心が連れて歩いていた・・。
他の同心だったら「捜査の一環だろう」と見過ごす所が、黒沢には以前からよくない噂が絶えずあったため、小柳は後をつけたのでした。
同心の中でも思慮が深く優しい性格の小柳が、同僚のことを長官である平蔵に報告してきた・・ということで平蔵は事を重く見て、二人で密かに捜査を始めるのでした。
途中、黒沢同心かお吉かどちらかの後をつけることになったとき、小柳は素早く賊の方を取ります。それを聞いて平蔵は「同じ仲間の黒沢勝之助にこれ以上、関わりたくはないと申すか・・」(中略)「辛いのは、わしのほうじゃ」と、珍しく弱音を吐くのでした。
それだけ部下の不祥事には心を痛めていたわけです。
「影法師」は、非番の木村忠吾が結婚前にあそんでおこう!と出かけた所から始まります。
相変わらずあそび好きな忠吾。途中で“さむらい松五郎”という以前、火盗改が捕らえた盗賊と間違えられ、命を狙われることに・・。
「火つけ船頭」は、無口で付き合いの悪い、何を考えているかわからない・・と評判の悪い船頭の話。
題名の通り、この船頭はストレス発散のために火つけを繰り返していました。あるときいつものように火をつけようとしていると盗賊集団が店に押し込もうとしているのを見てしまいます。そこで急いで火を付けて押し込みを妨害したのでした。
火盗改にも無名で投書し、盗賊の存在を知らせます。そして、当然この船頭も捕まるわけですが・・。この頃の放火は大罪です。本人はもちろん、家族まで死刑になるほど・・。最後に少し明るくなっていただけに残念な結果でした。
<鬼平犯科帳>
「鬼平犯科帳1」
「鬼平犯科帳2」
「鬼平犯科帳3」
「鬼平犯科帳4」
「鬼平犯科帳5」
「鬼平犯科帳6」
「鬼平犯科帳7」
「鬼平犯科帳8」
「鬼平犯科帳9」
「鬼平犯科帳11」
「鬼平犯科帳12」
「鬼平犯科帳13」
「鬼平犯科帳14」
「鬼平犯科帳15」
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