山本周五郎著 「ちいさこべ」
(新潮文庫)
江戸で起きた大火事のせいで両親を亡くした大工の茂次。店も同じ火事で焼けてしまい、一からやり直すことになった。周りの人たちが何とか助けようとしたが、彼は「誰の助けも借りない」と言い切り、仕事を続ける。苦しい中、近所のみなしごたちの面倒まで引き受けたのだった。あまり多くを語らない茂次の心意気に感動する作品。−「ちいさこべ」他「花筵」「ちくしょう谷」「へちまの木」計4編
驚くほど無口で頑固な茂次。これぞ江戸っ子って感じでしょうか(あくまでも私のイメージですが)。
茂次が若棟梁として川越に出向いて工事をしていたときに江戸で大火事が起きました。そのせいで両親を一気に失ってしまったのです。それでも仕事場を離れることなく職人の一人に江戸の店のことは全て任せ、自分は川越の仕事を完璧に終わらせました。
帰ってみると、おりつという幼馴染を(家事や雑用などをするため)店で住み込みで雇うことになっており、しかもおりつが次々とみなしごたちを集めて来ていたのでした。
店も一からというときに子どもを10人以上育てるのは無理だ・・と一度は断るのですが、結局は承諾して面倒をみることになります。
大きな仕事をいくつか引き受けてしまっていたため、金を苦心しながら集めて仕事にかかる茂次たち。同じ仕事仲間たちが助けようとしてくれるのですが、それを全て断り、一人で(自分たちだけで)店を建て直そうとします。両親の葬式も法事も一切することなく、仏壇に骨壷をおいたまま・・。
そんな茂次に何度も反発する職人たちやおりつ。説明をしてくれない茂次にいら立ちが募ります。
やっと心のうちを明かしたとき、茂次の決意や思いを知り、みんな感動するのでした。
思わず涙が出てしまう、感動の話です。
「花筵」も感動します。涙なしでは読めません。
お市は、昔から病気がちで実家にいるときにはすぐに布団に入れられてしまい、甘やかされて育ちました。陸田(くがた)家に嫁に来てからはそんなこともなく比較的、健康に過ごすようになり、嫁として少しずつ強くなっていきました。
姑・磯女や夫・信蔵、義理の弟たちともうまく生活していたのですが・・・。
夫にある疑いがかけられて逮捕監禁されてしまい、家は破綻してしまうのです。それからの苦労は並大抵のことではありませんでしたが、姑や義弟たちの明るい性格やお市の強い精神力で次々襲いかかる苦難を乗り越えます。
陸田家の人たちの言動に時々クスッと笑いながら、最後には号泣・・そんな話です。
4編しか収録されていないので、それぞれ少し長めの話になっていますが、気づけば読み終えている・・というくらい引き込まれる話ばかりです。
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引き続き「核心(下)」