2010年12月14日

朔立木「死亡推定時刻」

朔立木著 「死亡推定時刻

(光文社文庫)


ネットでの評判が良かったので読んでみることに・・。初めての作家さんです。


山梨県で地元の有力者・渡辺恒蔵の一人娘が誘拐された。要求されたのは現金で一億円。警察の指示で身代金の受け渡しを拒否したところ、翌日、少女は死体で発見された。山梨県警は、死体が発見された現場付近で目撃された小林青年を逮捕した。彼は少女の財布から現金を盗んだだけだったのだが、警察の執拗な尋問に疲れ果て、自白してしまった。このまま有罪になってしまうのか?真犯人は誰なのか?


気付けば話に入り込んでしまっているような流れの良い話でした。後半は特に一気読み。

警察関係者や検察、裁判官、弁護士、被害者家族、容疑者家族・・と登場人物がたくさん。それでも頭が混乱することもなく、それぞれが重要な役割を持って登場するので読みやすかったです。


誘拐された少女は、身代金がもらえなかったから殺害されたのか、それとも身代金を受け取るかどうかは関係なく誘拐してすぐに殺害されたのか?これは、警察にとって重要な要素でした。渡辺は警察上層部にも多大な影響がある人でしたから余計に、警察のミスでは済まされなかったのです。

そこで、死亡推定時刻が重要になるわけです。自分の保身のために捜査を進める警察の様子は、読んでいてイライラむかっ(怒り)するし、吐き気がするほどのひどさでしたがく〜(落胆した顔)

逮捕された小林青年は無罪だ・・ということは、読者にはわかっています。でもどうしてやってもいない罪を自白してしまうのか?その過程が詳しく書かれています。

警察の取り調べのやり方の巧妙さ、そして警察上層部の思惑がどのくらいの影響を及ぼすのか・・がよくわかりました。小林じゃなくても自白してしまうよね・・こうやって冤罪は生まれるんだ・・などなど考えさせられました。

弁護士のやる気というか考えももちろん被告人には多大な影響が出ます。よくドラマなんかで描かれる弁護士というのは「信頼関係が大事なんです!」とかって力説して、被告人が言ったことをきちんと聞いて調べようとしますが、ここに出てくる弁護士はそういう人だけではありません。こんなにやる気のない弁護士もいるんだ〜バッド(下向き矢印) 悲しくなりました。

後半になってやっと小林を助ける動きが出始めます。それまでは母親が亡くなって身内が助けてくれなくなったり、本当に不運でしたが、本気で何とかしようとしてくれる弁護士に出会うことができました。

川井という若い弁護士は、小林のためにというか、弁護士会や警察、検察、そして裁判のあり方を問うために立ちあがります。決して裕福ではない弁護士ですが、地道に足を使って調査をし、色々な人に助けを求め、何とか助けようとします。

更に、川井弁護士の奥さんや事務員の女性が素敵な人たちで、ホッと温かい気持ちになれる存在でした。


しかし、もしかしたら無実の人に死刑を宣告しているかもしれない という状況になってもまだしつこく自分の保身ばかり考える関係者たちに怒りを覚えましたし、あきれ果てる思いもしました。

ときどき、これは作り話なんだよね・・と思い出さないと冷静になれないくらいリアルに描かれた作品。読む価値ありですよ。



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パット・マガー「四人の女」

まだ読み始めたばかり
タグ:朔立木
この記事へのコメント
これ読んでみます。
面白そうですね!
Posted by チャウ子 at 2010年12月14日 23:18
コメントありがとうございます。

チャウ子さんが読んでた「捏造する検察」に近い内容かもしれませんね。
この本は小説ですけど・・。

私は面白いと思いました。
Posted by DONA at 2010年12月16日 10:51
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