山本周五郎著 「人情裏長屋」
(新潮文庫)
「松村信兵衛に会いたいときは、居酒屋“丸源”に行けば良い」と噂されるほどいつも居酒屋に居て酔っ払っている浪人・信兵衛は裏長屋に住んでいるが、働く様子も無く、酒びたりのくせに同じ長屋で困っている人を見かけるとお金を貸してあげたりして助けていた。あるとき、同じ長屋の浪人から乳飲み子を預かることになり、慣れぬ子育てに奮闘していた・・−「人情裏長屋」他「おもかげ抄」「三年目」「風流物屋敷」「泥棒と若殿」「長屋天一坊」「ゆうれい貸屋」「雪の上の霜」「秋の駕籠」「豹」「麦藁帽子」計11編収録
人なつっこい笑顔と、親切なのにさっぱりした性格が気に入られ周りから何かと頼られ「先生」と呼ばれるようになった信兵衛。
剣術の腕がたつので、金が必要になると道場へ出かけて行き、道場主(師範)に立ち会いを申し込んでわざと負けてやり、こっそりと金を貰っていました。勝ってしまうと面倒なことになるので、ギリギリまで追いつめてわざと負ける・・これが、立ち会い後も金を貰えるコツでした。
困っている人を見ると放っておけない性格で、同じ長屋にいた乳飲み子を抱えた浪人にも何かと世話を焼いていたのですが、その彼が「仕官の口を探すため」という理由で乳飲み子を一方的に託されてしまいます。
「子どもを捨ててまで得たい仕事とは何だ」と怒り心頭の信兵衛でしたが、乳飲み子を放っておけず、みんなの助けを借りながらも必死で育てます。
近頃の世の中では考えられないような近所同士の繋がり、そして人情、助け合い。暖かい気持ちになれる話でした。
「ゆうれい貸屋」は、題名の通りゆうれいを貸す商売の話。長屋に住んでいる弥六は働きもしない怠け者でした。女房にも愛想をつかされ逃げられてしまい、一人になったとき部屋に女のゆうれいが現れます。「うらめしや〜」とオドロオドロしく出ても全く相手にされないことに呆れた彼女(ゆうれい)は、弥六に「ゆうれいの貸し出しをしてはどうか?」と持ちかけます。
ドラマ化されたこともあるというこの作品は、始めは笑えて、最後にはゾッとするそんな話で、なかなか楽しめますよ。
「長屋天一坊」は、長屋の店子たちの家系図を知りたがった大家の話。天一坊という盗賊が現われ「自分は将軍の御落胤だ」と名乗った・・という事件があり、それを聞いた大家が「どこにどんな立派な家系の子孫がいるかわからない」と欲をかき、店子の家系を知りたがりました。何度も出自を聞かれて苛立った店子たちがある秘策を思いつきます。
強欲な大家一家をぎゃふんと言わせる計画に思わずニヤッとしてしまう面白い作品です。
長屋ものを中心にした短編集。笑える話も多いので、読みやすいと思います。
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引き続き「結婚詐欺師 上巻」
面白くなってきました。