加納朋子著 「掌の中の小鳥」
(創元推理文庫)
「僕」は大学時代、アートクラブに所属する女性・容子に憧れ、油絵を描く彼女のそばにいつもいて絵と彼女をずっと飽きずに眺めて過ごしていた。そんな容子が先輩と付き合うことになり複雑な心境になりながらも相変わらず大作を描き上げる彼女を見続けていたのだが・・。
「私」は高校生の頃、厳しすぎる校則に締め付けられ、登校拒否をしてしばらく学校を休んでしまった。そんな私を心配した両親は、夏休みの間、祖母の家へ泊まりに行くように勧めてくれた。祖母と過ごす日々は楽しく充実していたが、もうすぐ夏休みが終わる頃になると不安な気持ちが押し寄せてどうしようもなくなってしまった。私の様子を見かねた祖母はある賭けをしようともちかける・・。−「掌の中の小鳥」他「桜月夜」「自転車泥棒」「できない相談」「エッグ・スタンド」計5編収録
いきなり「僕」と「私」という二人の誰だかよくわからない男女の話で始まります。そして、この二人が出会って良い関係になる頃からそれぞれの名前や性格的なこともわかってきます。
初めはわけがわからない状態だったのですが、少しずつついていけるようになるとどんどん話に引き込まれる感じがしました。
話が変わるごとに視点が変わり、「僕」こと冬城圭介が視点となって話が進んだり、「私」こと穂村紗英が視点になったりします。これもまた面白かったです。
お互いが経験した少し奇妙な出来事を“エッグ・スタンド”という名前のバーで話し、それを聞いた相手が謎を解く・・という形式で進められ、バーの女性バーテンである泉さんや、常連客である「先生」と呼ばれる老紳士がヒントを出したりしながら謎は解かれていきます。
話す側も聞く側もすごく細かい事まで覚えていて、何度も「え!?そんなこと言ってた?」と戻って確認しないといけないくらい・・。まあ、物語としてそうじゃないと成り立たないわけですけど・・。
それに、二人の関係は言いたいことを言い合って、でもお互いを想い合って、うらやましい限りなんです

ちょっと妬ましいくらいでした。
人の気持ちって本当に複雑で、他人から理解しようとするのは難しい・・ということを改めて知らされたそんな気分になりました。あー、自分の気持ちを表現するのも難しい!

解説もとても詳しく、わかりやすく書かれていて、物語を最初から再読できたようなお得感がありました。ぜひ最後まで読んで下さい。
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佐々木譲著「警官の血 上巻」