2010年07月22日

山本周五郎「扇野」

山本周五郎著 「扇野

(新潮文庫)


流れ絵師の栄三郎が書いている枯野の襖絵の下絵が「何かが足りない感じ」と評された。素人に指摘されて心外だったが、自分でも同じように感じていたため、悩んでしまう。そんなとき、息抜きのために出掛けた料理茶屋で出会った芸妓に惹かれる。その芸妓・おつるに助けてもらい、襖絵を完成させたのだが・・−「扇野」他「夫婦の朝」「合歓木の蔭」「おれの女房」「めおと蝶」「つばくろ」「三十ふり袖」「滝口」「超過勤務」の計9編収録


栄三郎は元武士で、三男に生まれたため、家を継ぐことができず、養子にも行けず、小さい頃からグレて絵師の元へ通い詰めていました。その師匠である絵師によって酒の味を覚えさせられた栄三郎は、気づけば家から勘当され、身を持ち崩していました。

そんな姿を見て回船問屋・角屋の主人が拾ってくれます。そして資金や住む場所を提供して、絵を描く環境を整えてくれたのです。

そしてある武家から頼まれた襖絵を描き始めたのですが、行き詰ってしまいます。

角屋の娘・おけいから息抜きをするように言われ、出かけた栄三郎は芸妓・おつるが落としていった扇子を見て、それをヒントに絵を完成させるのです。

会った瞬間から惹かれ合った二人には様々な障害が訪れますが・・。

最後は思わず泣いてしまうような、感動的な結末が待っていて、でも幸せな部分もあって、なんともいえない気持ちになりました。


三十ふり袖」は、27歳のお幸という娘の話。27歳で独身というのは、昔は「もう嫁の口はない」と絶望視されるほどの年増でした。30近くになってもふり袖だなんて・・ってことです。この時代に生きていなくて良かった〜。

そんなお幸に「妾にならないか?」という話が持ち上がります。お幸には病気の母親がいて、お金がかかってしまい、生活に困っているので、妾になればお金ももらえて良いのでは?ということでした。

自分が嫁に行けずに妾になっている・・という事実が受け入れられず、なかなか相手の男性に心を開けず、自分の境遇を悲観しては泣いて過ごす日々でした。

ところが、本当の男性の想いを知って、自分の浅はかさに気づき、実は幸せだったのだとわかり、感動するのです。


この短編集は、恋人同士や夫婦のお互いを想う気持ちや、それを支えて見守る人たちの気持ちや行動に勘当できる話が詰まっています。

読んだら幸せな気分になったり、ちょっとホロリと泣けたり、とても素敵な話がたくさん入っているので、ぜひ読んでみて下さいね。


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柴田よしき著「激流(上)」

まだ始まったばかり・・
posted by DONA at 11:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:山本周五郎
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