加納朋子著 「ななつのこ」
(創元推理文庫)
ネットで感想を読んで面白そうだったので、買ってみました。表紙も素敵で、読むのが楽しみになる感じでした。初めての作家さんです。
駒子は「ななつのこ」という本を表紙の絵に惹かれて買った。話も気に入ったので、今まで書いたことのなかったファンレターを書いて作家の佐伯綾乃に送った。自分の身の回りに起きた何気ない事件を書いたところ、思いがけず謎を解明した内容の返事が来た。「スイカジュースの謎」「モヤイの鼠」「一枚の写真」「バス・ストップで」「一万二千年後のヴェガ」「白いタンポポ」「ななつのこ」計7編収録
ミステリーなのですが、人が死んだりするわけではなく、日常何気なく流してしまうような謎を解明していく話です。
駒子と佐伯の手紙のやりとりによって、謎が解明されるわけですが、今ではもう懐かしい感じさえする文通という方法が何だかあったかい気持ちにさせてくれます。
「いったい、いつから疑問に思うことをやめてしまったのでしょうか?いつから、与えられたものに納得し、状況に納得し、色々なことすべてに納得しまうようになってしまったのでしょうか?いつだって、どこでだって、謎はすぐ近くにあったのです」・・と駒子は初めのファンレターに書きます。
こんな軟らかい文章で続けられる文通、そして日常の小さな謎。
ミステリーとして読んだわけですが、とても優しい気持ちになる作品でした

私は特に「白いタンポポ」という話が気に入りました。真雪という小学生の女の子と駒子の心温まる会話が素敵でした

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この「ななつのこ」は、第3回鮎川哲也賞受賞作でもある、加納朋子さんのデビュー作ですね。
19歳の短大生・入江駒子が、「ななつのこ」という童話集と偶然出会い、作者である佐伯綾乃と手紙のやりとりを始め、その手紙によって、様々な不思議な出来事が鮮やかに解き明かされていくという連作短編集になっていますね。
まず話の作りが非常に凝っていますね。
童話集「ななつのこ」の中の謎と、駒子の身の回りの不思議な出来事が交錯し、二重のミステリという形になっているんですね。
そして、作中作「ななつのこ」の登場人物である「あやめさん」が主人公「はやて」の謎を解き明かすのと同様、「ななつのこ」の作者の佐伯綾乃が、駒子の疑問を鮮やかに解いていくんですね。
ミステリとしては、北村薫さんのような「日常の謎」。雰囲気がとても似ていますね。
北村薫さんの作品ほど読んだ時の衝撃度は高くなく、どちらかといえば「なるほど」と、静かに納得する感じなのですが、柔かく懐かしい雰囲気の中にも、時々ピリッとした部分が見えるのがとても良かったですね。
佐伯綾乃の謎解きには驚きましたが、私にとっては、佐伯綾乃よりも、作中作の登場人物である「あやめさん」の方が印象深かったかも。
この作中作の存在はとても大きいと思います。
作中作の方の「ななつのこ」を是非読んでみたくなりました。
コメントありがとうございます。この作品は表紙の雰囲気によくマッチした物語だった記憶はあります。が、読んだのがかなり昔なので細かくは覚えていません・・。