

揺れる車内でバッチリメイクできてしまう人たちに妙な感動を覚えることがあるんですよね〜。・・でも、その様子は離れて見たいかも。
前置きを付けてしまいました。
東野圭吾著 「赤い指」
(講談社文庫)
妻と息子、そして年老いた母という平凡な家庭をもつ前原昭夫は、よくある嫁と姑の問題に巻き込まれるのが嫌で、退社後すぐに帰宅するのをためらっていた。ところが妻から電話で早く帰ってほしいと頼まれ、久しぶりに真っすぐ帰宅した。帰宅した彼を待っていたのは、庭に置かれた少女の遺体だった・・。
ある意味、今まで読んだ加賀シリーズの中で、一番面白かったといえるかも。読み終わるのも早かったですし。
前半は、この前原家の人たちにずっとイライラさせられ、心の中で「なんでそんな対応しかできへんの

前原家の主人である夫とその妻のやりとりは、本当に怒りがわきました。そりゃ、息子はこうなるわ・・って思います。子どもをもつ親として被害者の両親の気持ちは絶対にわかるはずなのに、そんなことほとんど出てこない。自分たちの保身ばかりに気をとられて。
「この家には、隠されている真実がある。それはこの家の中で、彼等自身の手によって明かされなければならない」と加賀が言った瞬間、これでこの家族も何とか救われるんだ・・と何だか安心しました。
最後には思わず涙・・。
老人介護の実態や、子育ての大変さなど、今の社会の問題が取り上げられていて、重みのある話になっています。
加賀の父親との関係も明らかになり、これも涙を誘いました。
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乃南アサ著「いつか陽のあたる場所で」
なかなか面白い!
この「赤い指」は、加賀恭一郎物の1作で、ミステリ作品ではありますが、単に事件を解けばいいというだけのミステリではありませんね。
物語は、加賀の父親に対する態度に割り切れない思いを抱く松宮の視点と、1人息子が犯罪を犯してしまった、前原昭夫の視点の双方から描かれており、その中に嫁姑問題や老人介護問題、家族の絆など、家族や家の問題が濃密に織り込まれていますね。
殺人を犯しながらも、まるで反省の色が見えない直巳や、そんな息子をかばおうとする両親の姿を見ているのが、とてもつらいです。
それだけしてやっても、息子は親を有難いなどと思うことはないでしょうし、懲りずに同じことを繰り返すでしょうに--------。
そんな不愉快な事件なので、事件が解決して心底ほっとします。
そして、事件の解決が、松宮の心情的なわだかまりの解決と見事に重なっているところがいいですね。
この作品は、松宮脩平という刑事の、刑事として、人間としての成長を描く作品にもなっていると思います。
「刑事というのは、真相を解明すればいいというものではない。いつ解明するか、どのようにして解明するか、ということも大切なんだ」という加賀の言葉が素敵ですね。
まさにその通りに解決していますね。
そして、上司である小林主任に「しっかり、加賀君のやり方を見ておくんだぞ。おまえはこれから、すごい状況に立ち会うことになるからな」と言われた脩平には、少し面白くない思いもあったかとは思いますが、これは確かに大きな経験となったはずです。
ただ、重いテーマを扱いながらも、非常に読みやすいのはいいのですが、それだけに、東野圭吾さんは、本当は長編ミステリとして、もっと深いところまで書きたかったのではないかという思いも残りましたね。