山本周五郎著 「菊月夜」
(新潮文庫)
江戸詰めの間に信三郎の許婚・小房の父が狂死し、家族が追放されてしまった。国許へ戻った信三郎に両親や重臣から、身分の合わない相手との婚礼話が持ち込まれる。重臣になり、陰で政治の癌と呼ばれている人物を討つように依頼される。その人物について探っていると、思わぬ場所で小房と再会する−「菊月夜」他「其角と山賊と殿様」「柿」「花宵」「おもかげ」「一領一筋」「蜆谷」「忍術千一夜」「留さんとその女」「蛮人」の計10編収録
武家に生まれると、男だけでなく女も大変で、自分の人生よりも家のことや国のことを先に考え、そのためならいつでも命を投げ出せる覚悟が必要です。今では全く考えられない強い意志をもっていて驚かされますし、感動します。
「菊月夜」の信三郎も国のために小房に思いを残したまま重臣の娘と結婚しますし、重臣の娘も小房に遠慮して偽装結婚をする覚悟をします。二人とも自分の人生を捨てたわけです・・。最後には小房の思いもわかり、更に感動してしまいます。
「花宵」「おもかげ」は、母親の子どもを思う愛が書かれています。
「花宵」は、自分ばかり叱られることに不満を感じていた弟が「自分が継子だからではないか?」と疑っているのですが、本当は・・母親はなぜ弟ばかりを厳しく育てたのか、それがわかり改めて立派な大人になろうと決心する兄弟の話です。母親の思いはなかなか子どもに伝わらないものですね。でも気持ちがわかると全てが納得でき、感謝の気持ちでいっぱいになる・・強い絆を感じます。
「おもかげ」は、母親が早くに亡くなったため、叔母に厳しく育てられた男の子の話です。なぜこんなに厳しくされるのか?と悲しくて仕方ない男の子ですが、母親を忘れないためにあえて厳しく育てた叔母の気持ち。自分が嫌われても相手を叱る・・なかなかできないことだと思います。それを信念を持って叱り続ける。すごいと思いました。
他の話も感動する物ばかりですし、ちょっと笑える話もあり、一つ一つの話は短くてあっさり読めますよ

↓ ランキングに参加中 お帰りの際にポチッ×2と押していって下さると嬉しいです


