今野敏著 「神南署安積班」
安積警部補シリーズ5
(ハルキ文庫)
街でからまれていた女性を助けるために暴力事件を起こした青年。相手が死亡してしまったと思い込んで必死で逃げてしまう。そんな青年を速水が気に入って・・。−「スカウト」他8話(計9話)収録の短編集。
安積の諭すような語りかけと、速水の力を使った説得、同期の二人の個性がハッキリ表れています。
「噂」は「速水が援助交際をしている」という噂の真相を探る話。多くを語らない速水とそれを信頼する安積の大人の友情に感動でした。
「夜回り」は安積班の巡査長、黒木にスポットを当てた話。かなり無口で、スポーツマンタイプでクールな印象の黒木。なかなかスポットを当てられない彼がこんな形とはいえ(ネタバレになるので書きませんが)中心人物の扱いを受けるなんて、ファンにはたまらない話です。
「自主」は安積班の部長刑事、須田にスポットを当てた話。「刑事らしくない」と何度も言われる須田ですが、本当は色々と考えていてなかなか鋭い面ももっています。安積からは絶大な信頼を得ています。犯人にも感情移入してしまうそんな彼らしい話です。
「刑事部屋の容疑者たち」これは安積班の絆を強く感じられる話です。詳しい内容は書きませんが、面白いのでぜひ読んで下さい。
「異動」は安積班の巡査、桜井にスポットを当てた話。シリーズ始めの頃は結構発言もしていたのに、神南署に来てからはかなり目立たなくなったのですが、この話で彼の心の中がのぞけたような気がしました。
「ツキ」は須田の運の良さが事件を解決に導いた話。須田の新たな一面を見られる話です。安積との連携も光ります。
「部下」は安積班の部長刑事、村雨にスポットを当てた話。安積は村雨のことを苦手に感じているのですが、「仕事は出来る奴」と信頼しています。二人の微妙な距離感が不思議で、興味深い話です。
「シンボル」は安積班と、とりまく人たちの話。一度は閉鎖された東京湾臨海署が復活するのでは?という話があり、安積の思いや上司の思い、部下の思いなどが書かれています。ファンとしては「同じメンバーで臨海署が復活すれば良いのに」って強く願ってしまいます。
相変わらず一気読みの作品です。
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