下村浩 著
「ラストシーンはさりげなく」
1981年の春、京都。20歳の僕は、脚本家をめざす不思議な少女・ホシノサクラと出会う。彼女が暮らす女子寮「あおい館」は、戦前「あふひホテル」と呼ばれた美しい洋館。そのロビーに飾られた一枚の古い絵画に魅入られた僕は、やがて50年前の情熱の軌跡を辿り始める。80年代の京都で夢を追う、才能あふれる女たちの瑞々しい日々。そして、かつてここから夢を抱いてパリへ旅立った一人の女性の、激動の人生。二つの時代、二つの青春が時空を超えて響き合うとき、僕自身の「夢」が目を覚ます。すべての『夢見る花たち』へ贈る、「ラストシーンは さりげなく」。−amazonより−
「本が好き」で献本いただきました。
聞いたことない出版社だと思ったら、自費出版だそうです。
勝手に読んだことがある作家さんだと思っていたのですが、調べたら読んでいませんでした。ということで、初めましての作家さんです。
前半と後半で分かれています。繋がりはあるのですが、時代は後半の方が古くなっています。ちょっと読みにくい気がしましたが、読み終わるとこの順番で描かれているのが心地良かったんだと思えました。
プロローグでは「あおい館」という、元は「あふひホテル」だった洋館の紹介から始まります。1931年に建てられた洋館で、イギリス人のオーナーがホテルとして経営していました。
時を経てホテルは閉鎖され、1961年に今度は東京から来た日本人女性が買い取り、女子寮を開きました。
前半の話はそこから20年経った1981年の話です。
京都の大学生の僕の視点で始まります。大学でホシノサクラという学生が自分の好きな映画についてプレゼンするのを聞きます。なかなか面白いプレゼンだったので、後で声を掛けたところ思いがけず映画に誘われます。
そこから頻繁に映画に行く2人。この辺りの映画の詳しい話たちは、映画に詳しい方なら楽しめるでしょう。私はほぼ見たことが無い映画の話ばかりだったのでサラッと読みました。
雰囲気とか、3本立てが放映されていたりとか、古き良き昭和の映画館の様子が読めたのは懐かしかったです。私もこの頃には映画館で見ていましたからね。3本立てを見るほど好きではないですけど。
このまま映画好きな2人が仲良くなって付き合って・・みたいな恋愛ものが続くのかと思いましたが、プロローグで出て来た「あおい館」が登場し、雰囲気が変わっていきました。
サクラを「あおい館」まで送って行った僕が振り返って手を振ったら、急に違う世界に引き込まれたような感覚になりました。サクラと同じ窓から手を振る見知らぬ女性と、その女性を見ている自分の感情の高まり。
一瞬だったのですが、その光景が離れなくなりました。
サクラと待ち合わせをする時だけではなく「あおい館」に通うようになり、ロビーに飾られている絵画に惹かれていきます。その絵を描いた作家について調べるようになります。
フランス人の作家が描いた作品ですがその作家の作品はほとんどなく、日本で活動していた記録もありませんでした。調べてくれた人が見つけた写真に、あの時窓から手を振っていた女性が写っていることに気づき、ますます知りたくなっていきます。
その割には、調べてもらった以外は特に何も動かないのですが。
サクラだけではなく、あおい館に住んでいる女性たちとも仲良くなっていき、毎日のように呑んであそんでいました。彼女たちの人生に深く関わっていく僕。
話の展開がよくわからなくなった頃、いよいよ「あおい館」のオーナー・アオイさんと会います。彼女を見たとたんに感情が溢れて泣いてしまう僕。ここの展開はう〜〜んではありますが、後半も読み終わった今では感動の場面になりました。
そして後半。
「あおい館」のオーナー・葵さんの視点で進みます。どこかに行こうと夜行列車に乗っている場面から始まり、長旅を経て京都に着きました。勝手に決められた自分の結婚相手と会うのが嫌で家出のようにして旅に出たようです。
修学旅行で行ったフタバアオイが群生している場所が気になり向かっていましたが見つからず。でもその時に知り合った男性から誘われていたホテルのことを思い出し、「あふひホテル」に辿り着きます。
そこで出会ったフランス人の男性と仲良くなっていくわけですが、この辺りから読者としては、前半で出て来た葵さんと葵さんの絵を描いたフランス人画家の人生が描かれるんだとわかってきます。
後半は、私の苦手な時代の話、全く知識が無いのでいちいち「そんな悲劇があったんだ」と勉強しながらの読書になりました。
フランス・パリに移住した2人がどんな暮らしをして、どんな人生を歩んだのか。
パリがドイツのヒトラーによって襲撃され、有名な絵画たちも略奪され、一部は燃やされてしまう悲しい事態にもなり、そんな作品たちを1つでも多く残そうと尽力する様子が詳しく描かれます。
芸術作品のために命をかける、その気持ちがわかるとは言えません。人の命よりも大事なものってあるのか?と思う方なので、いくら歴史的価値があるとはいえ、「物」じゃないか、と思ってしまいます。
でも彼らのように命をかけても守りたい物があるのが羨ましくもなります。
そして、物語は「あおい館」を作るために京都に戻ってくる葵の姿が描かれて終わります。
前半で描かれていた若者たちの人生がどうなったのかは「あとがき」としてほんの少し触れられますが、しっかりとした結末はありません。
この物語ははっきりとした結末は必要なかったかな?と納得できますし、読者が好きなように考えられるのが良いと思えました。
なかなか壮大な物語で、青春小説でもあり、時代小説でもあり、恋愛小説でもあり、ジャンル分けが難しい作品でした。
ずっしり重い読書時間になりました。
感想がうまくまとめられず、いつも以上に長々してしまいました。
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