天藤真 著
「大誘拐」
(創元推理文庫) ※電子書籍
刑務所の雑居房で知り合った戸並健次、秋葉正義、三宅平太の3人は、出所するや営利誘拐の下調べにかかる。狙うは紀州随一の大富豪、柳川家の当主とし子刀自。身代金も桁違い、破格ずくめの斬新な展開が無上の爽快感を呼ぶ、捧腹絶倒の大誘拐劇。天藤真がストーリーテラーの本領を十全に発揮し、映画化もされた第32回日本推理作家協会賞受賞作。−出版社HPより−
初めましての作家さんです。
かなり古い作品みたいですね。映画化もされたそうです。だから題名を知っていたのか。
刑務所で知り合った3人組が、紀州随一の大富豪の当主を誘拐するという話です。
その当主(刀自と呼ばれている)は誘拐犯の1人が実は子どもの頃にちょっとした因縁があったおばあさんでした。犯人たちがなかなかの頼りなさで、誘拐を実行するまでもあれこれ問題が発生しますし、きちんと考えているようで実は穴だらけの計画だったので後々のフォローが大変でした。
やっと誘拐できたと思っても計画の杜撰さが目立ち、結局刀自に支配されるような状況になります。
始めは数百万を要求するつもりだったのに、数百億に値上げされ、どうやって金を受け渡すか?や、被害者が無事であることをどう伝えるか?も全て刀自の言うままに進められます。
本当は潜伏するはずだった家はあまりにもすぐに見つかりそうだということで、隠れ家を見つけたのも刀自という状況はかなり情けない・・。
どこか憎めない犯人たちで、誘拐という大それたことをしている割にはのんきと言うか考えが甘いというか。
途中からは刀自の思惑が何となくわかってきて、性格が良さそうなイメージだったのに意外としたたかなんだと思えてきました。かわいらしくはあるんですけどね。
この誘拐の方法は、古い時代だから出来ることで、現代だとかなり難しそうです。いくら田舎でもほとんどの人がスマホを持っている時代ですから、誰にも見られず気づかれず・・というのは無理だと思います。
最終的にしてやったりな刀自に感心しつつ、事件を起こした犯人たちに対してそんな結末で良いのか?とも思いますし、税金は払わないといけないでしょ?とも思いましたし、何とも複雑な気持ちになりました。
後は文章が古くて読みにくく、面白いのに進まなくて時間がかかりました。
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タグ:天藤真

天藤真さんの「大誘拐」は、まず誘拐という悲惨になりがちな犯罪が、ここまでユーモアたっぷりに描かれているのは凄いですね。
和歌山の一地方で起きた事件は、テレビ中継によって全国、全世界に知れ渡り、国会で討論され、最終的には米軍まで巻き込んでしまうんですね。
虹の童子の強気の要求に、和歌山県警の井刈本部長が負けじと挑戦、その挑戦に虹の童子がさらに意表をつくようなことを言い出すというやり取りも面白いですし、テレビ局や警察を出し抜く場面も最高ですね。
本当にワクワクしてしまいます。内容的にも色々と工夫されていて全く飽きさせませんね。
加えて人物造形も素晴らしいですね。
誘拐犯の3人組の抜け加減も憎めないのですが、何と言っても、とし子刀自のキャラクターが最高ですね。
普段は皆に慕われている優しいおばあちゃんのとし子刀自ですが、頭の良さとしたたかさも持ち合わせており、しかも長い人生を生きているだけに酸いも甘いもかみ分けているんですね。
誘拐されている身でありながら、誘拐犯たちに知恵を貸し、5000万円の身代金は少なすぎる、末代までの恥だと言って怒り、「犯人からの要求状」も代筆するんですね。
3人ととし子刀自の連携プレーも絶妙。
そしてジェラルミンケース67個分にもなる100億円をどうやって受け取るかというのが、物語のクライマックス。
とし子刀自がなぜ身代金を100億にしたのかというのも読みどころですね。
結局、誰も不幸にならず、損もせず。本当の意味での悪役は不在でした。
ほのぼのとした温かい雰囲気で安心して読める作品でした。
とても清々しい気分にさせてくれる、素晴らしい作品でした。