2025年01月10日

白蔵盈太「あの日、松の廊下で」

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 白蔵盈太著
 「あの日、松の廊下で」
 (文芸社文庫)※電子書籍


「殿中でござるってばァ・・」そう発することになってしまった旗本・梶川与惣兵衛は、「あの日」もいつもどおり仕事をしていた。赤穂浪士が討ち入りを果たした、世にいう「忠臣蔵」の発端となった松の廊下刃傷事件が起きたひである。江戸中を揺るがす大事件の目撃者、そして浅野内匠頭と吉良上野介の間に割って入った人物として一躍注目されるようになった彼は、どんな想いを抱えていたのか。江戸城という大組織に勤める一人の侍の悲哀を、軽妙な筆致で描いた、第3回歴史文芸賞最優秀賞受賞作。−出版社HPより−


初めましての作家さんです。

日本人なら知らない人はいないであろう有名な「忠臣蔵」の元となった「松の廊下刃傷事件」のことが描かれています。


忠臣蔵のドラマは色んな物を見てきましたが、「忠臣蔵」としては前段階の部分になるので大抵はサラッと流されてしまう部分です。浅野内匠頭が吉良上野介に小言を言われている・・我慢を重ねたけど限界!・・松の廊下で切りつける!・・「殿中でござる」と止められて・・一方的に切腹させられお家断絶。

この一連の流れが10〜20分くらいでサラッと流されてしまいます。

忠臣蔵としてはその後の浅野家の家臣たちの様子がメインになりますから仕方ないのかもしれませんが、そういえば何で浅野内匠頭は吉良上野介に切りつけたんだろう? いじめられたっぽいけどどうしていじめられたんだろう?と聞かれたらよく知りませんでした。

まあ興味もなかったんですけどね。

この作品では、なぜこの事件が起きることになったのか?をメインに、そこまでの2人の様子が描かれています。この話を進めていくのは「殿中でござる」と叫んで浅野内匠頭を止めた、梶川という旗本です。

彼の目から見た2人の様子が描かれます。


ここに描かれていることが全て本当のことなのかはわかりませんが、もしこれが事実なのだとすれば、吉良のことも浅野のこともイメージが変わりました。

吉良はもっと我儘で、自分を中心に世界が回っているかのような自己中的な人物だと思っていました。下の人間を見下して、常に俺は偉いんだから言うことを聞け!というタイプかと。

浅野のことは田舎の出だから、江戸という場所に圧倒されているせいで大人しくなってしまっている人物だと思っていました。言いたいことを言えないからこそうっぷんがたまって爆発したのかと。


ところが意外と吉良は周りのことも考える人物だったとわかりましたし、浅野はおとなしいばかりではなく意外と言いたいことを言っていることがわかりました。

ではどうして事件は起こったのか?

簡単に言うとお互いの気持ちのすれ違いだったということです。言いたいことを言っているようで、結局は今でいう会社の上司と部下みたいな関係なので、上司は上司で気を使ってやんわりと注意しますし、部下は部下で言いたいことの半分は飲み込んでしまう。

そんな2人の間に立って関係を取り持とうとしたのが梶川です。彼の苦労は読んでいてもしんどくなるほどでした。ただもう少し何とかならなかったんだろうか?とイライラする部分もあります。

でもまあ彼は彼で中間管理職的な立場というか、浅野が部下ではないので更に大変な状況。


もっと早めに誰かに相談出来ていればこんな事件は起きなかったのかもしれません。そうなると「忠臣蔵」もなくなるわけですが。


個人的にあまり興味が無かった事件ですが、意外と楽しく読めたので良かったです。とりあえず当事者2人の印象は大きく変わりました。


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タグ:白蔵盈太
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