
椹野道流 著
「最後の晩ごはん 後輩とあんかけ焼きそば」
(角川文庫)
芦屋の定食屋「ばんめし屋」の看板店員、五十嵐海里のもとに後輩で俳優の李英がやってきた。関西で役者修行をしていたが、正式に所属事務所が決まり、東京に戻るという。海里は苦楽を共にした後輩の新たな出発に喜び、店長の夏神らとささやかな送別会を計画する。しかし送別会の当日に李英は現れず、海里は彼が滞在先で意識を失っているのを発見。しかし入院した筈の彼が思わぬ姿で現れて・・!?泣けて元気がもらえる第16弾!!−裏表紙より−
今回も霊的な物はなく、魂?でした。
しかも、海里の可愛い後輩・李英の・・・。
海里が芸能界を引退というか、追い出されてからも、地道に頑張っていた李英。関西で舞台を中心に活動し、いよいよ所属する事務所が決まり、東京に戻ることになっていました。
これから!という時に、思わぬ苦難が。
いつも穏やかで微笑みを絶やさないイメージの彼ですが、ここまでの困難が訪れるとさすがに心が折れてしまいます。そして海里の元にやって来るのですが・・・。
今回は久しぶりに号泣する場面がいくつもあり、読んでいて疲れてしまいました。
海里の言葉もですが、ロイドの叱咤激励にも泣かされ、李英の葛藤にも泣かされました。
そして、何より夏神さん。彼の言葉はずっしりと重かったです。
海里が夏神さんに、昔自分が死にそうになっていたのを助けてくれたのは自分のことを想ってのことだろう?と聞いたら、返って来た返事がこうでした。
「俺が、お前を、生かしときたかった。そんだけの話や。目の前で死なれたら気ぃ悪いやろが。まあ言うたら、俺の我が儘やな」
「誰かのためを思うて、とか言い出すと、話がややこしゅうなる。思われたほうが、重とう鬱陶しゅう感じるやろ」
「そやから、自分の我が儘でええんや。ほんで、自分の我が儘には、己が責任を持つんや。俺は我が儘を通して、その結果、今、お前が笑って生きとるんが嬉しいで?それでええやないか」
これは良い! 「我が儘」ってマイナスなイメージでしたが、この「我が儘」は良いな。
相手に生きていて欲しい、死なないでくれ!と思うのは自分の我が儘。そう言ってもらえたら、開いても少しは気が楽になりそうです。そしてその我が儘には責任を持つ。簡単にはいかないことでしょうけど。
そういう言葉掛けが出来たら素敵ですね。
今回のことで、海里だけでなく、李英の今後も気になってきました。彼がしっかり立ち直って、立ち上がってくれるのを見守りたいです。
<最後の晩ごはん>
「ふるさとだし巻き卵」
「小説家と冷やし中華」
「お兄さんとホットケーキ」
「刑事さんとハンバーグ」
「師匠と弟子のオムライス」
「旧友とおにぎり」
「黒猫とドーナツ」
「忘れた夢とマカロニサラダ」
「海の花火とかき氷」
「聖なる夜のロールキャベツ」
「秘された花とシフォンケーキ」
「閉ざされた瞳とクリームソーダ」
「地下アイドルと筑前煮」
「初恋と鮭の包み焼き」
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