
椹野道流 著
「最後の晩ごはん 閉ざした瞳とクリームソーダ」
(角川文庫)
芦屋の小さな定食屋で働く、元イケメン俳優の海里。今の夢は、街のカフェ兼バーで、憧れの人と新たな舞台に立つことだ。そんなある日、海里は事故で視力を失った女性、瞳と出会う。彼女を気遣ったつもりが、返ってきたのは意外な反応。一方、店長の夏神には、昭和のレシピ再現メニューについて取材依頼が。しかしかつてのトラウマから消極的な夏神を、海里は残念に思い・・。思いやる気持ちが行き違う、お料理青春小説第13弾。−裏表紙より−
海里には憧れの女優さんと朗読劇という舞台に一緒に立ちたいという目標が出来て、今までのように店を手伝いながらも、週に何度かは女優さんの舞台を見ながらバーで働くようになりました。舞台の前にはトレーニングもしてもらえるため、充実した日々を送っています。
そんな舞台を見るためにやって来た女性・瞳は、事故で視力を失ってまだ日が浅いので、一人での外出が覚束ない感じでした。そんな彼女を親切にサポートする海里でしたが、彼女にある提案をしたことで怒らせてしまいます。
海里としては親切にしたつもりだったのですが、何が気に障ったのか、気持ちがわからず落ち込みます。
これって、どちらの気持ちも何となくわかる気がしました。海里の気持ちはちょっとお節介感がありましたけど、まあ悪いことでは無いし、気遣ってしてくれたことだからわからなくもないです。瞳の気持ちは、自分が健康なだけに「わかる」とは言い難いのですが、わかる気はします。ある程度手伝っては欲しいけど、過剰な気遣いは余計なことなんですよね。
その加減って人によって違うでしょうから、手を貸すのも本当に難しいと思います。本人に聞くのが一番良いのでしょうけど、それを聞かれるのも嫌な人もいるでしょうしね。
片意地を張っている感じがした瞳に訪れた奇跡と恋の始まりは、クスリと笑いつつも涙無しでは読めませんでした。きっと彼の支えがあれば大丈夫!そう思える終わり方だったのが良かったです。
そして、夏神さん。彼も大きな転機を迎えます。ずっと隠れるように生きて来た彼が大きな一歩を踏み出しました。人によっては大したことじゃない、と思えるような一歩ですが、今までの彼の葛藤を読んできた読者にとっては拍手喝采の気分になれると思います。
<最後の晩ごはん>
「ふるさとだし巻き卵」
「小説家と冷やし中華」
「お兄さんとホットケーキ」
「刑事さんとハンバーグ」
「師匠と弟子のオムライス」
「旧友とおにぎり」
「黒猫とドーナツ」
「忘れた夢とマカロニサラダ」
「海の花火とかき氷」
「聖なる夜のロールキャベツ」
「秘された花とシフォンケーキ」
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