今野敏 著
「暮鐘」東京湾臨海署安積班
(ハルキ文庫)
またしてもストーカー殺人事件が起きた。東報新聞は、被害者から相談を受けていたにも拘わらず、今回も事件を防げなかった警察を非難した。皆懸命に取り込んでいるものの、すべての事件を未然に防ぐことは難しい。悩んだ末に安積が出した答えとは・・。(「防犯」より)本当に守るべきものは何なのか?臨海署メンバーの熱く真っ直ぐな眼差しが心に刺さる、傑作短編集。−裏表紙より−
「公務」「暮鐘」「別館」「確保」「大物」「予断」「部長」「防犯」「予告」「実戦」が収録されています。全て漢字2文字で並んでいてスッキリ。
それぞれの感想を書くのは大変なのでいくつか。
一話目の「公務」
働き方改革とかで、残業がしにくくなっている世の中。警察署にも残業を減らせ!命令が出ました。そんなこと出来るわけない、きっと本気で言ったわけではないだろう、建前だろうと考えた安積は今まで通りの働き方をしていました。すると上司に呼び出され叱責されることに。
警察で働く人の中でも事務員ならまだしも、刑事だと残業するなは無理でしょ?と思います。事件が起きて捜査本部が出来ようものなら徹夜もするというのに、今更残業を減らすなんて無理なことを。この理不尽な命令に安積はどうやって立ち向かうのか!
うまく落としどころを見つけて解決していく安積はさすがです。
「大物」
普段はあまり目立たない存在ともいえる、桜井がメインとなる話です。
安積班の中で一番若手というのもあり、ちょっと何考えているのかわからないイメージでもありましたが、この話を読むと、良い奴じゃん!って感心しました。村雨の教育も良いのでしょうが、うまく周りをたてながら、きちんと事件を解決させていく所はかっこよかったです。
桜井について何も知らないことについて悩む安積の姿も面白かったです。でもこれくらい何も知らない方がうまくいくのかもしれません。
「予断」
飲みの席での推理ゲームという感じです。かなりひっかけ感もある話ですが、だからこそ「予断」という題名にもなっているわけで。重くなくて軽い内容でクスリと笑える感じではありますが、意外と教訓があって面白いです。
「実戦」
桜井に続いて陰のうすい、黒木がメインの話です。
一緒に組んでいる須田が少し太ってドタバタする印象なのに対し、黒木はスマートでシュッとした印象。須田がおしゃべりしているのをひたすらうなずいて聞くだけの彼。でもこの話ではなかなかカッコいい一面を見せてくれました。
能力を周りに知らせずコッソリ秘めている所が彼らしいです。
こんな感じで、日ごろスポットの当たらない人物にもクローズアップして描いてくれているこの作品集。
安積班シリーズのファンは必読の一冊です。ファンでなくても、ここから読み始めてシリーズを追ってみるのも楽しそうです。
<安積班シリーズ>
「二重標的」
「虚構の殺人者」
「硝子の殺人者」
「警視庁神南署」
「神南署安積班」
「残照」
「陽炎」
「最前線」
「半夏生」
「花水木」
「夕暴雨」
「烈日」
「晩夏」
「捜査組曲」
「潮流」
「道標」
「炎天夢」
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