
今村翔吾 著
「てらこや青義堂 師匠、走る」
(小学館文庫)※電子書籍
明和七年、泰平の江戸日本橋で寺子屋の師匠をつとめる坂入十蔵は、かつては凄腕と怖れられた公儀隠密だった。貧しい御家人の息子・鉄之助、浪費癖のある呉服屋の息子・吉太郎、兵法ばかり学びたがる武家の娘・千織など、個性豊かな筆子に寄りそう十蔵の元に、将軍暗殺を企図する忍びの一団・宵闇が公儀隠密をも狙っているとの報せが届く。翌年、伊勢へお蔭参りに向かう筆子らに同道していた十蔵は、離縁していた妻・睦月の身にも宵闇の手が及ぶと知って妻の里へ走った。夫婦の愛、師弟の絆、手に汗握る結末―今村翔吾の原典ともいえる青春時代小説。−出版社HPより−
最近お気に入りになっている作家さんのシリーズではない作品。
題名と表紙の雰囲気から寺子屋の日常のちょっとした騒動を師匠と筆子がドタバタしつつ解決していく、的な話しかと思っていたのですが、まさかこんな内容だとは!と驚きました。ドタバタではありますが、命のやり取りをするような真剣なドタバタですし、内容も重い。
元公儀隠密というすごい経歴をもつ十蔵が営む寺子屋には、個性的な筆子が4人ほど。さすがに他にもいるようですが、他の寺子屋で破門された子どもも拒まないため、どうしても個性的な子どもが集まるようです。そして、授業料も安いため、ずっと貧しい状態です。
元隠密ということは公には出来ないため、誰も知りませんが、只者ではないとは思われているようです。
筆子が持ち込むゴタゴタを解決?と思ったら、急に不穏な空気が。個性的な筆子である4人と伊勢参りに出かけることになったところから話は急展開していきます。
実は十蔵は昔結婚していたのですが、隠密時代に一方的に離縁していました。隠密という仕事上、家族がいることが足かせになるし、家族も命を狙われることが多発したため、里に帰しました。
せっかく平穏な日常を手に入れたのに、十蔵の命を狙う隠密集団がいるとの情報が。そんな中出かけた伊勢参りの旅。筆子も連れていましたが、不穏な動きが活発化してきて、更には里に帰した妻の命も狙われているとわかりあわてて駆けつけます。
筆子たちも師匠を助けるため命がけの戦いを強いられ、十蔵も筆子を守るため、妻を救うために戦い、目が離せない展開が続きます。
緊迫した場面が続く中、奥さんの存在に助けられました。命狙われていますけど!?わかってる?と言いたいくらいのんきな反応を繰り返していて、でもかなりしっかりした性格と頭の良さもあって、十蔵を顎で指図するような感じがとても素敵でした。
何でこんな良い人と別れたんだ!と十蔵を叱りたくなるほどの存在。
最後は何とか収まる所に収まって、良い感じになりました。これはシリーズ化は難しいかな?毎回ここまでの命がけの戦いをしていたらもたない気がします。もっと軽いいざこざなら続けられるのに残念です。でもまた彼らに会いたいな。
↓ ランキングに参加中 お帰りの際にポチッ×2と押して行って下さると嬉しいです。

