柴田よしき 著
「さまよえる古道具屋の物語」
(文春文庫)
挿絵と文がさかさまの絵本。硬貨投入口がない貯金箱。ポケットの底がぬけているエプロン。把手のないバケツ。その古道具屋の店主は、役に立たないものばかりを、押し付けるように客に売る。その目論見は何なのか?バブル以降激しく移り変わる世相を背景に、モノと心の間で翻弄されながらも懸命に生きる人々を描く傑作長篇。−裏表紙より−
題名はともかく、表紙の絵が気味悪い感じで読むのをためらってしまう雰囲気です。読み始めると特に怖さは無いのですが、古道具屋の存在がどんどん怖くなっていきました。
連作短編になっていて、1話毎に登場人物は変わり、話も変わるのですが、時々それぞれの話が交わります。なので、1話読み終わったからといって内容を忘れてしまうと後で困ります。
2話目は、阪神淡路大震災のことが描かれていたので、早々に断念。あまり細かく描写されるとその時に戻ってしまう感覚がして読めないんです。だからその話に出てくる人物については後で出てきても何となくしかわからない状態で読み進めました。それでも問題なかったですけど。
3話目以降は、謎の古道具屋の客となった人たちが語る話が続きます。ポケットの底がぬけているエプロンを買った作家は、1話目に出て来た人物ですが、1話目のほのぼのとした雰囲気から一転、エプロンによってもたらされた数々の不思議な現象について語られ、始めは幸せそうな家族がどんどん転落していく様子が読んでいて怖くなりました。本人も言っているようにエプロンのせいだけではないでしょうが、人間の欲望は終わりがなく、それに惑わされると悪い方向に落ちていくものなのだと改めて思わされました。
そして4話目以降から次々と古道具屋の謎が明かされて行きます。欲深い人間に罰を与えているのだとして、なぜそんなことをしないといけないのかがわかりません。もしそんな罰を与える存在だとすれば正体は神なのか?と思うしかないですが、そのオチはここまでの流れから考えて弱すぎるので違うだろうと思いますし。
古道具屋の正体とその存在意義についてはネタバレになるので書きませんが、なるほど、と納得できました。ただまあ、ここまでまわりくどくやらなくても良かったのでは?とも思います。でもそれも正体があれだから仕方ないのかもしれません。
ファンタジーではありますが、人間の闇の部分や深い悩みや生き方について濃く描かれている、ある意味この作家さんらしい作品でした。
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