
中村颯希 著
「神様の定食屋」
(双葉文庫)※電子書籍
妹とともに、両親の遺した定食屋を継ぐことになった高坂哲史。ところが哲史は料理がまったくできず、妹に叱られてばかり。ふと立ち寄った神社で、「誰かに料理を教えてもらいたい」と愚痴をこぼしたところ、なんと神様に、この世に未練を残した魂を憑依させられてしまった。神様曰く、魂から料理を教わる代わりに、その魂が望む相手に料理を振る舞い、未練を解消してやってほしいということで―。思い出の味を繋ぐ、五編の心温まる物語。−出版社HPより−
初めましての作家さんです。
ネットの感想を読んで面白そうだったので、電子書籍で読んでみました。
読み始めは、文章の軽さと、話し言葉で書かれる感じのチャラさについていけない感じがして、失敗したかな?と思ってしまいました。更に主人公もウジウジした性格ときては、早々に読むのをやめようか?と思うほどでした。
でも気づけば引き込まれ、軽い文章も気にならなくなり、軽い文章の中に重い言葉が入っていたりして、読むのが楽しくなりました。
そうなると、主人公のウジウジした性格も「優しい人」に変わるんですよね。
両親が遺した定食屋を妹が続けていきたいと言い出すので、巻き込まれる形で兄である哲史も経営することに。妹は両親が健在な頃から店を手伝っていたのですが、哲史は手伝ったこともない上に料理も全く出来ない、更には接客の経験もない。
理想が高く、厳しい妹にいつも叱られて落ち込んでいた哲史が神社に行き、愚痴をこぼしたら、この世に未練を残した魂を憑依させられます。なんという展開!
色んな料理をしてきた亡き人の魂を身体に入れることで、彼らの想いを受け止めながら料理も目の前で、というか自分の身体で作り出すことが出来るようになります。
なるほど、それでこの人に貸して料理の腕を上げていくわけか〜と読んでいると、1話毎に魂が成仏してしまう! つまり哲史は色んな人の魂を身体に入れながら、色んな料理を知って、接客も知っていくわけです。
冷静に考えたら怖い状況ですけど、ある意味簡単で手っ取り早くもありますね。
これだけの展開ならつまらないのでしょうが、身体に入った魂たちの未練を料理を振る舞うことによって浄化されていく過程が素敵で、毎回涙が出ました。亡き人の想いもそうですが、亡くした側の気持ちも丁寧に描かれていて涙なしでは読めません。
何人もの魂を浄化させた哲史は料理の腕も上がり、定食屋とは、接客とは、ということも分かって、これで話が終わって良い感じと思っていたら、実はシリーズになっているようです。
確かに続けようと思えば出来る話ですが。つまり、哲史の料理人としての腕はともかく、未練を残した魂を浄化させる方に重きを置いて続けていくのでしょう。
たくさん感動させてもらったので、続きもそのうち読もうかな?
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