
西條奈加 著
「隠居すごろく」
(角川文庫)
巣鴨で六代続く糸問屋の嶋屋。主人の徳兵衛は、三十三年間の仕事一筋の生活に終止符を打ち、還暦を機に隠居することにした。人生がすごろくならこれは上がりだ。だが、孫の千代太が住処にきて静かな生活は一変。犬や猫を拾っては連れてくる孫に「そのやさしさを人のために使ってみてはどうだ」と諭した徳兵衛は、千代太の仲間に囲まれ、賑やかな日々を送ることになる。第二の人生の上りはいったいどこに?心揺さぶる時代小説。−裏表紙より−
33年間も仕事一筋、質素倹約に努めて来た徳兵衛は、ある日突然、奉公人たちを前に「隠居する」と宣言します。六代続く糸問屋を大きく育て上げ、商いも軌道に乗せての隠居、本来ならみんなから祝福されそうな所ですが、日ごろから口やかましかっただけにあっさりと送り出されます。
みんなに言い出す前から隠居を決めていた徳兵衛は、店からも近く、でも田舎ある空き家を見つけて来ていました。そこに手を入れて住むことにしたわけですが・・。
徳兵衛がどんな人物なのかは言葉の端々からしかわからない状態からの隠居宣言。でもきっと退屈するぞ〜と心配していたらやはり数日で飽きて来た様子。色々やることを見つけていたはずなのに、ことごとく性に合わないことが発覚。
私も無趣味な人間ですから、仕事を辞めたら退屈するだろうと思っているので、徳兵衛のことを笑っていられません。
暇だし店の様子を見に行こうかな?でもすぐに退屈していると思われるのはプライドが許さないということで、悶々と日々を過ごしていました。そこへやって来たのは孫の千代太。特別親しかったわけではありませんが、なぜか彼はおじいちゃんが好きで訪ねてきます。
ただあそびに来るだけなら良いのですが、来る度に猫や犬などを拾ってくるので徳兵衛は辟易します。そこで「そのやさしさを人のために使ってみては」と余計な助言をしてしまいます。
これはまずいことになりそう・・と思ったらやっぱり。今度は動物ではなく言われた通り、子どもを連れてきました。明らかにちゃんとした暮らしをしていないであろう姿をしたその兄妹を見て焦る徳兵衛。そこからどんどん千代太が持ち込む騒動に巻き込まれていきます。
度々、孫に助言をする徳兵衛ですが、その助言をまっすぐに受け止めすぎる孫は、思わぬ問題ばかり持ち込んできます。今まで商いのことで手一杯だった徳兵衛が初めて人助けのために動きます。
そこはやはり大店を仕切ってきただけあって、見事な采配で孫のため、他人のために行動を起こし、うまく問題を処理していきます。その様子は読んでいて爽快な気分になれますよ。
これは面白いシリーズが出来たな、と思っていたら最後に残念な出来事が。シリーズにはならないようです。それだけが残念でたまりません。もっと色んな騒動が起きて、精力的に活躍する徳兵衛の姿が見たかったです。
なんとかして続けられないかな。
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