
柚月裕子 著
「検事の信義」
(角川文庫)
任官5年目の検事・佐方貞人は、認知症だった母親を殺害して逮捕された息子・昌平の裁判を担当することになった。昌平は介護疲れから犯行に及んだと自供、事件は解決するかに見えた。しかし佐方は、遺体発見から逮捕まで「空白の2時間」があることに疑問を抱く。独自に聞き取りを進めると、やがて見えてきたのは昌平の意外な素顔だった・・・。(「信義を守る」)−裏表紙より−
「裁きを望む」「恨みを刻む」「正義を質す」「信義を守る」の4編収録されています。
映像化されている作品もあって読んだことがあるような錯覚を覚えてしまいました。映像化されたものを先に見ていると、その俳優さんが頭に出てきてしまいますが、その場の雰囲気や街並みなどは思い浮かべやすくて良いですね。
「裁きを望む」
これはドラマで見ました。でも結末は忘れていたので楽しめて良かったです。ある資産家の隠し子が親子鑑定してもらうために画策する話です。普通に親子鑑定してほしいと言ってもしてもらえないので二重三重に伏線を張って裁判所も巻き込みながら思いを遂げていきます。そこまでしなくても・・と思ってしまいますが、何だか切ない気持ちになりました。
「恨みを刻む」
これもドラマで見ました。アリバイの矛盾点からどんどん事件が思わぬ方向に転がっていきます。最後がスッキリとはいきませんが、佐方は良い上司に恵まれていて羨ましく思いました。
「正義を質す」
これも結末がスッキリしない感じでした。色々な立場の色々な人たちの思惑が絡み合って、検察の世界も政治の世界に似ているように見えました。
「信義を守る」
これも何とも言えない読後感でした。悲しくて切なくて、でもそれだけでは語れない重い問題。母親のことを自分で介護したくて、でも精神的にも体力的にも大変で、でも他人に任せたくなくて・・・。本当に簡単には言えない問題です。自分にもいつかは降りかかってくる問題。でもまだどこか他人事な感じがあって、それではいけないと思いつつどうにもできない。
国の制度で何とかしてほしいですが、それだけではどうにもできないであろうこともわかりますし、親には長生きしてもらいたいけど介護は大変で、どうすれば助けられるのか、助けてもらえるのか、今から色々調べておくべきなのでしょうね。
今回の佐方も自分の信念を貫きつつ、信じられる上司と頼りになる事務官に支えられながら検事の仕事をまっとうしていました。すっきり出来ない話も多かったですが、やはりこのシリーズは面白いです。
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