
西條奈加 著
「雨上がり月霞む夜」
(中公文庫)
がさつだが情に篤い秋成と、死者や妖しと交流する力を持つ雨月。幼馴染の二人は人間の言葉を話す兎「遊戯」との出会いをきっかけに、様々な変事に巻き込まれることに―。掛け軸から飛び出す金鯉、歳を取らない美女、罪の果てに鬼にまでなった男まで。江戸怪奇譚の傑作『雨月物語』をモチーフに綴る、切なく幻想的な連作短編集。−裏表紙より−
「雨月物語」がモチーフになっている物語です。
と書きながら、「雨月物語」を読んだことがないのでどの程度関係があるのかわかりませんけど。「雨月物語」を書いた秋成が登場します。彼が「雨月物語」を書くまでの話という感じです。
秋成はあまり細かいことは気にしないタイプの人で、だからこそちょっと不思議な雰囲気を持つ雨月と仲良くいられるようです。雨月が出会った、人間の言葉を話す兎と3人(?)が巻き込まれて行く出来事が描かれています。
その出来事というのが普通のことではなく、霊や妖などが出てきて、悲しいことも多いのですが、悲しい中にもゾッとするようなことがあるので、怖いのが苦手な私としてはあまり想像せずに読まないと辛い部分もありました。
後半は秋成の幼馴染としてずっとそばにいた雨月のことが明かされて行きます。読者は結構早めに雨月は人間では無さそうだと気づくと思うのですが、一番そばにいるからこそ秋成は気づいていませんでした。
だからこそ“がさつ”と呼ばれてしまうのでしょうけど。
雨月は人間ではないだろうということには気づいていましたが、その正体は意外なものでした。こんな結末だとは。
私が想像したように誰かの霊だった方がスッキリ出来たと思うのですが、それではこの物語はうまく収まらなかったのかもしれません。人間が内に秘めている感情や欲望がテーマになっているわけですから。
でもやっぱり彼らが共に過ごしてきた年月を思うと悲しい気持ちになってしまいます。
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