
西條奈加 著
「せき越えぬ」
(新潮文庫)
東海道箱根の関所には、曰くありげな旅人が訪れる。離縁され故郷に帰る女。江戸から夜逃げをした夫婦・・。実直な番士武藤一之介は、親友の騎山市之助から関所に関する法外な依頼をされる。一之介は逡巡するも決断する。友の人生の岐路に際し何もしないのは裏切りも同然。たとえこの身に害が及んでも必ず友を助けなければならない―。関所をめぐる人間ドラマを描いた圧巻の人情時代小説。−出版社HPより−
物語は、武藤という真面目な武士が箱根の関所を越えようとしている所から始まります。初めての箱根越えで汗だくになり、関所を越えるために必要な書類を濡らして文字が滲んで読めなくなってしまいます。
読めなくなるとは言ってもよく見れば読める程度だったのでいけるだろうと思っていたら、融通に利かない役人に止められてしまいます。融通が利かないというより、難癖をつけていじめているかのような役人の態度に、真っ向からぶつかって行ってしまい、ますます通してもらえなくなりました。
真面目過ぎるのも考え物です。
その役人の態度が気になった武藤は、下役と親しくなり、事情を聞くことに。事情を知っても放っておけば良いのに首を突っ込んでしまったため、関所の番士を入れ替える事態にまで発展し、気付けば武藤自身が番士として勤務することになっていました。
二話目以降は、番士となった武藤たちの仕事ぶりが描かれていきます。
箱根の関所というのはあまり歴史に詳しくない人でも知っている有名な関所ですね。ここを越えると江戸に出られますし、逆に江戸にも入ることが出来る重要な場所でした。
将軍のいる江戸に怪しい人を入れるわけにいきませんし、重要な人物を江戸から出すわけにもいかない。最後の関門でした。
色んな人が関所を越えていきますが、特に印象に残ったのは妊婦さんの話でした。この時代、男性でも越えるのが難しかった箱根ですが、女性は更に大変でした。妊婦だからといって調べが甘くなることはなく、足止めされることも多かったようです。
ここに出てくる妊婦さんも調べに時間がかかってしまい、関所内で産気づいてしまいます。でもここで産んでしまったら、子どもと離れ離れにならざるを得ないということで、武藤たちは必死で策を練ることになりました。
奔走する様子を読みながらも、なんて大変な時代なんだと腹が立ちました。
武家の女性はもっと大変で、基本的には江戸から出ることは出来ないくらいでした。武家の女性は将軍家にとって人質のようなものだからです。色々理不尽な時代ですね。
最後の話がメインのようでしたが、これはあっさり終わり過ぎていたのでちょっと物足りない感じでした。この終わり方だと続編は無さそうですが、出来ればまた武藤たちの活躍が読みたいです。
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