
近藤史恵 著
「散りしかたみに」
(角川文庫)
歌舞伎座での公演中、毎日決まった部分で桜の花びらが散る。だれが、なんのために、どうやって花びらを降らせているのか?女形の瀬川小菊は、探偵の今泉文吾とともに、この小さな謎の調査に乗り出すことになった。1枚の花びらが告発する許されざる恋。そして次第に、歌舞伎界で30年以上にわたって隠されてきた哀しい真実が明らかにされていく―。歌舞伎座を舞台に繰り広げられる。妖艶な魅力をたたえた本格ミステリ。−裏表紙より−
シリーズ2作目。前回も悲しい物語だった気がしますが、今回も・・。
起きた事件は、そこまで大きくなく、誰かが殺害されるわけでもありません。ただ、公演中に毎日同じ場面で花びらが一枚降ってくるだけ。
花びらが一枚落ちてくるだけなら放っておけば良いやん、と思いますが、その舞台に立って芝居をしている役者からすれば気になるもので。まあ確かに毎日毎日同じ場面で必ず一枚だけ降ったら気になるかもしれませんけど。
他の場面で降らしていた花びらが残っていて、ということでもないとなれば、誰が何のために降らせているのか?と調べたくなるのはわかる気がします。
師匠に「気になるから調べろ」と言われてしまったら、調べなければならないのが弟子というもので、小菊は友人でもある探偵の今泉に相談することにします。でもなぜか今泉は話を聞いたとたんに「調べるのはやめろ、放っておけ」と言い出します。辛く悲しいことに巻き込まれるからというだけで、細かい理由は語ってくれません。
そんな曖昧なことで師匠が納得するはずもなく、小菊は再び調べ始めます。そこで浮上したのが同じ歌舞伎役者の若手の人。ちょっと色気もあってモテるその役者の怪しげな行動に注目して調べるわけですが、彼は同じ場面で舞台に立っているので直接手を下すことは出来ない。
・・・と色々調べていくわけですが、進捗状況を知らせる度に悲しげになっていく今泉の様子も気になりますし、その役者の周りにいる人たちも気になり、誰が犯人なのか?ということよりも、どこに着地点があるのか?というのが気になってしまいました。
花びらを一枚降らせるだけなんですから、そこまで大きな動機ではないだろうと思っていたのですが、最終的には・・・。
謎が解明されると、歌舞伎の世界の狭さに呆れますし、そこまでして守らないといけない伝統って何なんだろう?と不思議でなりませんでした。
こんな結末を迎えるほどのことをしたわけでもないのに・・と色んな意味で悲しくなりました。
もっと気楽に生きてはいけないものでしょうか。伝統を守るって大変なことなんですね。
絶対に関わりたくないと思ってしまいました。まあ関わることはないでしょうけど。
↓ ランキングに参加中 ポチッ×2と押して下さるとうれしいです。

