
西條奈加 著
「無暁の鈴」
(光文社文庫)
家族に疎まれ寒村の寺に預けられた武家の庶子・行之助は、手ひどい裏切りにあって村を捨てた。絶望から“無暁”と名を変え、ひょんなことから一緒になった万吉と江戸に向かう。悶着をきっかけにやくざの冲辰一家の世話になることになった無暁と万吉――波瀾万丈の人生が始まる。信じるものを見失った無暁が、最後にたどり着く圧倒的な境地とは?傑作が待望の文庫化!!−裏表紙より−
とある男性の人生を描いた作品です。
その男性は、家族に疎まれてある小さな寺に修行という名目で預けられていました。よくある田舎の厳しい寺という感じなのですが、そこの住職がなかなかの強欲者で、村の女性を無理やり・・ということもよくありました。
友だちになっていた女性が、それを原因にして目の前で自殺するのを見てしまったため、寺を出奔してしまいます。
まだ子どもだったのですが、二度と寺には戻るまいと決めて一人さまようことに。
空腹のまま倒れ込んだ所に偶然やって来た少年・万吉と仲良くなり、共に知恵を絞りながら江戸へと旅することになりました。寺にいただけに、坊主に見えてしまう彼は名を無暁と変えて、坊主頭のまま旅をしました。途中の寺に泊めてもらうこともあり、捨てたはずの仏の道の先にある何かを見つけたくなってしまいます。
しばらくは別の道を歩んでいたのですが、生きていくためにやくざの一員となり、万吉と助け合いながら生きていきます。そこからどんどん人生が複雑になっていきます。
あまりにも真っすぐな無暁が、その真っすぐさゆえに思いがけない試練にぶつかったり、不幸に見舞われたりするのを読むのはとても辛かったです。少し幸せになりそうな雰囲気が出ることもあるのですが、そうなると無暁がそこからいなくなり、より大変な道を歩んでいくんです。
そっちに行ったらしんどいのに・・と何度も止めたくなってしまいました。
最後の最後まで結局は辛い道を進んでいく無暁。彼の人生が終わるとき、彼は幸せだったのだろうか?と考えずにはいられませんでした。彼を慕っていた人たちも幸せだったのか?
読み終わったとたん、大きくため息をついてしまうような大作でした。大河ドラマのような長い映画を1本見終えた感覚になりました。
↓ ランキングに参加中 ポチッ×2と押して下さるとうれしいです。

