2021年06月14日

行成薫「僕らだって扉くらい開けられる」

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 行成薫 著
 「僕らだって扉くらい開けられる」
 (集英社文庫)※電子書籍


もしも突然「超能力」に目覚めたら? 誰もが抱いたことのあるそんな妄想が、現実になってしまった5人。でもその能力は「触らず物を動かせる(ただし10cmだけ)」、「相手を金縛りにできる(ただし自分の頭髪が抜ける)」といった、役立たずなものばかり。そんな彼らが、謎の誘拐事件に巻き込まれ……。さえない僕らだって、きっとできることがある! W最弱W超能力者たちによるW最強Wエンタメ小説。−出版HPより−


テレキネシス(念動力)、パラライズ(金縛り)、パイロキネシス(発火能力)、サイコメトリー(精神測定能力)、マインド・リーディング(読心術)、テレパシー(精神感応)の能力に目覚めた6人の物語です。

なんて便利そうな力!と憧れてしまいそうですが、実はそれぞれの能力は色々と欠点があり、読み進めると結構ショボいと思ってしまいます。

まず、テレキネシス。念じれば物が動く能力で、リモコン要らずで便利そうだと思いますけど、実は10センチしか動かせません。しかも重い物は無理で軽い物だけ。例えば、カウンターで食べるラーメン店などで、隣の人の前にあるラー油が取りたい、でも知らない人の前に手を伸ばすのはちょっと・・という時に、この力を使ってちょっと自分に引き寄せてから取る、という感じで使えるのですが。

う〜〜ん、要りますか?この能力。「すみません・・」と声を掛けて取ればそれでいい気がしますよね。


パラライズは、相手に触れて金縛りにさせることができる能力なのですが、これは力を使う度に毛がごっそり抜けるという弊害が。ひえ〜!相手を金縛りにしたいような状況って今まであったことがないので、これは本気で要らないかも。


パイロキネシスは、念じれば発火させることが出来る能力です。ただ、感情によって火力が変わるので、怒りに任せると火事になりかねません。でもまあこれは訓練すれば何とかコントロール出来るようになるかもしれないな、とは思います。ただ、この能力は要らないかも。日常でどうしても火がつけたいのに点ける物がなくて困る状況もないので。


サイコメトリーは、物を触ったら、それを直前に触っていた人の気持ちがわかる能力です。これはこれで面倒な感じはしますけど、ここに出てくる能力者は極度の潔癖症で、誰が触ったのかわからない物に触れるのがかなりのストレス。そういう状況だとますます要らない能力な気がします。


マインド・リーディングは、読心術なので、相手の目を見れば考えていることがわかります。使い方によっては便利かも?あまり知りたくないこともありますけど。でも自分に対して負の感情を抱いているのを知ってしまうと対人恐怖症になりそうです。実際、ここに出てくる能力者は学校の先生でしたが生徒たちの心の声を聞いてしまって立ち直れなくなり引きこもりになってしまいました。


テレパシーは、相手に自分の感情を声に出さずに伝えられる能力です。ここに出てくるのは子どもだったので、全くしゃべることが出来ないという状況になっていました。まあこれは訓練すれば治りそうですね。この能力も要らないな〜。伝えたくないことの方が多い気がするので。



そんな色んな問題のある超能力者たちが、1〜5話ではそれぞれが日常においてどんな能力の使い方をしているか?や、ちょっとした事件を解決したり、問題の解決に乗り出したりしている様子が描かれていて、独立した短編でありながら同じ町や同じ店、共通した人物が出てきて繋がっている連作短編の状態で話が進みます。

超能力者たちは最終話までお互いの存在を知らずに生活していますが、最終話で一致団結します。

あらすじにもあるように、謎の誘拐事件に巻き込まれていくわけです。そこで、彼らのほんのちょっとした力、問題点の多い力を使って解決していきます。題名の「僕らだって扉くらい開けられる」という状況になるわけですね。


なぜ、一つの町に突然超能力に目覚める人が続出したのか?も明らかにされ、今一つ自信が持てなかった彼らが前向きに生きていく大きなきっかけとなりました。



笑える部分の多い小説ですが、シリアスな部分もあり、奇想天外な展開に目が離せない状態でした。終わって見れば何だったんだ!?って感じですけど、重い小説が続いた時なんかに箸休めにぴったりな作品でした。


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タグ:行成薫
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