乃南アサ 著
「いっちみち」
(新潮文庫)
家族が引き起こした不祥事で故郷を離れ、コロナ禍のなか帰郷した女性。母の実家で、家業代々の秘密を知った息子。両親を事故で失い、我が家にやってきた不思議な従妹。わかりあえると思ったら、遠ざかる。温かいのに怖い。恋があって、愛があって家族になったはずなのに――。「人間」という人生最大のミステリーを描き続けてきた作家による、傑作短編を精選した文庫オリジナルアンソロジー。−裏表紙より−
「いっちみち」「ルール」「青い手」「4℃の恋」「夕がすみ」「青い夜の底で」「他人の背広」「団欒」の7編収録。
表題作「いっちみち」というのは、方言です。ちょっと行ってみて〜みたいな感じです。両親の都合で、子どもの頃に故郷から逃げて来た女性が、新型コロナウィルスが流行し始めた頃、移動が制限される前にちょっと故郷に帰ってみようかな?と思い立ち、行くことになるという話です。
両親がなぜ故郷を離れないといけなかったのか、今彼女が帰っても問題はないのか、田舎ならではの人間関係や幼い頃の恋など、色んな出来事が描かれています。この話は最後までほっこり出来る内容でした。
でも表題作以外は何とも後味が悪い話ばかり・・。
「ルール」は突然、神経質になって除菌など細かいルールを作り始めた家族の話。これもこのご時世にはありそうな話ではありますが、どんどんエスカレートしていく家族の様子にゾッとさせられました。最後も・・・・。
「青い手」が一番気持ち悪かったかも。始めのうちはのどかな田舎の雰囲気で進むので安心しかけたのですが、少しずつ秘密が明らかになっていくと怖い!ホラー的な雰囲気で終わりました。私の苦手分野!
「4℃の恋」もなかなかの内容。これはゾッとするというか、ここまで「死」に対して冷酷でいられるものなのか不思議な気持ちになりました。身内の死よりも自分の恋を優先させる展開が怖かったです。
「団欒」も「死」を軽く扱いすぎ!と思うのですが、ここまで軽く扱っているのを読むとどこか笑えて来るのがまた怖い。自分たちの保身にばかり気を取られる彼らがなかなか怖いです。途中まででも怖いのに、オチがまた・・・。家族が集まって誰もまともな人がいないのが救いようのない状況です。
という感じで、どの話も最後までいや〜な展開で、オチも「これで終わるつもり!?」と後味の悪さ全開。
表題作以外、どれも救われない展開ですが、変に笑える感じもあって、何とも言えない感情がわきました。
まあ、たまにはこういうのも良いのかな?でもすぐに確実に安心できる作品で口直ししたくなります。
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