
近藤史恵 著
「インフルエンス」
(文春文庫)
小学二年生の友梨は、同じ団地に住む親友の里子が虐待されていることを知る。誰にも言えないまま中学生になった時、憧れの存在・真帆を救うために友梨は男を刺してしまうのだが―不可解な事件が少女たちを繋げ、罪は密かに重なり合う。大人になった三人の運命が明らかにした驚愕の真相とは。現代に響く傑作長編。。−裏表紙より−
これは感想が難しいな・・。
同じ女性だけに理解できる部分もあって心が痛くなることが何度かありました。でもきちんと彼女たちの気持ちが理解できたかというとハッキリ言って理解不能です。
団地に住んだこともないですし、親友が虐待されていたことも(多分)ないですし、中学校が荒れていたわけでもないですし、同級生が(在学中に)事故死したこともありませんから、全てを理解できるわけもありませんが、そういう環境で育ったからと言って、彼女たちのようになるとも限らないでしょう。
女子同士って小さい頃からややこしいですけど、ここまでドロドロするのは珍しいと思います。彼女たちの人生を読んでいると自分の子どもの頃ってなんて幼かったんだろうと思ってしまいます。
友梨なんて、平均的な普通の家庭で育っているのに、どこでそこまで達観したというか、物事を冷静に分析して生きていけるようになったんだろう?と不思議でした。親友の里子は特殊な家庭なわけですし、誰も助けてくれない状況で被害を受け続けたのですから、ある程度大きくなって反抗的になるのは納得出来ますが。
そして真帆。私には唐突に現れたように思えたのですが、彼女の何がそこまで友梨を惹きつけたのか、友だちになったからといってそこまで出来るだろうか?と疑問がわきました。
結局、始めの里子のことで抱いた何とも言えない、どうしようもない罪悪感からどんどん負の連鎖が続き、誰か一人でもまともな判断を下していれば止められたであろう出来事なのに「友人のため」「以前助けてくれたから」ということを言い訳にして犯行を重ねてしまうことになったのでしょう。
最後に何とか止めることが出来たわけですが、全ての犯罪を償ってはいないですし、この犯罪のきっかけとなった里子の祖父がしっかり反省する場面があってほしかったと思います。
小説の中とはいえ、彼女たちの人生が悲しすぎて、読むのが辛くなる作品でした。余韻もすごくて、しばらくぼんやりとしてしまうくらいでした。
なるべく冷静に、客観的に距離をとって読むことをお勧めします。入り込むと辛いですよ。
↓ ランキングに参加中 ポチッ×2と押して下さるとうれしいです。

