
神楽坂淳 著
「うちの旦那が甘ちゃんで」
(講談社文庫)
はっきり言って月也は「ぼんくら」である。月也とは沙耶の旦那で、風烈廻方同心を拝命している。のほほんとした性格から盗人を取り逃がすことが多く、小者(付き人)たちは愛想を尽かして次々と辞めていった。次の小者を誰にするか。考えあぐねていた沙耶が思いついたのは、なんと「自分」だった。―新感覚時代小説。−裏表紙より−
初めましての作家さんです。
ポップな雰囲気の表紙絵そのままに、軽いタッチで描かれた時代小説です。時代小説を読み慣れない人でも読みやすそうで、お勧めです。
「風烈廻方」というあまり聞きなれない役に就いている月也。風烈廻方とは、町奉行所の中の部署で、火事が起きないように風の強い日でも昼夜問わず見回る役のことだそうです。その同心として働いています。
同心というのは、1人で見廻るわけではなく、小者を連れていきます。小者に、犯人や容疑者を確保する際に必要な道具を箱に入れて担がせてついて来させるわけです。
同心は、さっと身軽に動けるように何も持たずに歩いているわけですね。何だか便利なのか不便なのかわからないですが・・。
ここに出てくる月也は、「ぼんくら」と陰で言われてしまうような人。それでよく同心なんかやってると感心しますが、読み進めるとなるほどと納得できる所もたくさんありました。頭の方はあまりよくないようですが、剣術の腕は確かで、大抵の人には負けませんし、義理人情に厚いので、良い采配を振るうこともあって「いいことしたね〜」と思うときもあります。
でもその分、その優しさに付け込まれてしまうことも多々あり、問題も多い人物です。
そんな同心のそばにいても、出世は見込めないから、小者も付いていたくないんですよね・・。まあわからなくもないです。働くのは楽そうですけど。
月也の奥さん・沙耶は、かなり頭の切れる女性です。良い人を妻にしたな〜とそこだけは評価したいくらいです。
沙耶は、自分の旦那が頼りないことをよく知っています。小者が居つかない理由もわかっているので、何とかしたいとは思うのですがなかなか。そこで思いついたのが、自分が小者になるということ。
これには月也が「格好悪い」と拒否します。そんなこと言っている場合か!と叱りたくなりますが、まあ妻に荷物を担がせてついて来させるのはかなり格好悪そうですからね・・。
とはいえ、自分で担いで歩くのもかなりみっともないので、沙耶にお願いすることに。
沙耶がついてきてくれるお陰で、事件もどんどん解決していきます。
沙耶は普通に捜査するのではなく、色んな知恵を働かせて解決に導いていきます。その方法は感心してしまいました。
ほんと、出来た奥さんです。
沙耶のお陰で出世もしていきそうな月也。まだシリーズは始まったばかりなので、今後の展開が楽しみです。
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