
西條奈加 著
「大川契り 善人長屋」
(新潮文庫)
掏摸に騙りに美人局。住人が全員悪党の「善人長屋」に紛れ込んだ本当の善人・加助が、またしても厄介事を持ち込んだ。そのとばっちりで差配母娘は盗人一味の人質に。長屋の面々が裏家業の技を尽くして救出に動く中、母は娘に大きな秘密を明かす。若かりし頃、自らの驕り高ぶった態度が招いた大きな罰のことを―。流れゆく大川が静かに見つめた、縺れた家族の行方を丹念に描く人情時代小説。−裏表紙より−
裏家業を持つ住人が集まる善人長屋シリーズ第3弾は、再び短編集でした。
今回は加助が持ち込んだものだけではなく、事件の方から長屋に飛び込んできたパターンもありました。
驚いたのは、差配の一家にまだ家族がいたということ。しかもなかなかこじれた関係のようで、これを機に仲良くなれたら良かったのですがそれもまあ簡単にはいかない様子。
でも少しは長屋のことを見直してはくれたかな?とは思えたので、これからかな? 今後もこの人は出てきそうな雰囲気です。
そして、最終話が一番印象に残りました。あらすじにもある事件のことです。
差配の妻と娘が人質にされてしまいます。娘は女性だということで、犯人に襲われることも覚悟していて、その時は「舌を噛み切って死ぬ!」と言い切るのですが、それに対して母が言ったことは・・。
これを告白するのはなかなか勇気のいることです。でも、告白したことで母と娘の関係がより深く強くなったと思いますし、差配である夫との絆の深さを感じられて感動しました。
シリアスな話になりそうな場面で、娘の明るさがクスッと笑わせてくれる、このシリーズらしい展開で、感動しながらも笑わされてなかなか面白かったです。
ますますお気に入りになったシリーズ。また続きも読みたいです。早く文庫化を!!
<善人長屋シリーズ>
「善人長屋」
「閻魔の世直し」
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