
坂井希久子 著
「ほかほか蕗ご飯 居酒屋ぜんや」
(ハルキ文庫)
家禄を継げない武家の次男坊・林只次郎は、鶯が美声を放つよう飼育するのが得意で、それを生業とし家計を大きく支えている。ある日、上客の鶯がいなくなり途方に暮れていたときに暖簾をくぐった居酒屋で、美人女将・お妙の笑顔と素朴な絶品料理に一目惚れ。青菜のおひたし、里芋の煮ころばし、鯖の一夜干し・・只次郎はお妙と料理に癒されながらも、一方で鶯を失くした罪責の念に悶々とするばかり。もはや、明日をも知れぬ身と嘆く只次郎が瀕した大厄災の意外な真相とは。美味しい料理と癒しに満ちた連作時代小説、新シリーズ開幕。−裏表紙より−
初めましての作家さんです。
そのせいか文章に慣れるまでちょっと時間がかかってしまいました。同じ行を何度が読んでしまったりして・・。1話目の後半に差し掛かる頃にはすっかりはまっていて、登場人物たちも魅力的で次々読み進めました。
1話目が、只次郎という武士(とはいえ、町人のような気さくさをもつ男性)の視点で描かれていて、女将・お妙はちょっと謎めいた存在だったので、このまま私生活は明かされずに進むのか?と思っていたら、次からはお妙の視点でも描かれていました。
素朴な料理を出す「ぜんや」。町人はもちろん、只次郎のような武士にも贔屓にされてなかなか繁盛しています。名物は美人女将・お妙。そして、その義理の姉・お勝。
お妙は顔と料理の腕が魅力なのですが、穏やかな性格も人気の理由です。一方、お勝はお妙の亡き夫の姉なのですが、年齢もいっていますし、はっきり言って美人とは言い難いのですが、サバサバした性格が魅力。
誰が相手でも言いたいことをはっきり言ってしまうのが、逆に心地良いと思われているようです。
そんな2人の魅力と美味しい料理でもてなしてくれるので、常連がたくさんいるのも納得です。
「ぜんや」には、只次郎が持ち込む問題や、他のお客が絡んだ問題などが持ち込まれ、それをみんなで解決していくわけですが、そこにはこの時代の人たちの苦労や生き方などが描かれています。
只次郎も気楽な次男坊となってはいますが、次男坊ならではの苦労もあるようです。
この只次郎を始め、出てくる人たちがそれぞれ良いキャラクターで、すっかり魅了されてしまいました。
シリーズは続いているようなので、忘れないうちに続きも手に入れたいです。
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