
渡辺淳子 著
「東京近江寮食堂」
(光文社文庫)
定年退職を間近に控えた妙子は、十年前に消えた夫の行方を探すため東京にやってきた。慣れない土地でのひょんなトラブルから、谷中にある宿泊施設、近江寮にたどりつく。個性的な管理人や常連客の貧しい食生活を見かねた妙子は彼らの食事を作り始めるが、その料理はやがて人々を動かし、運命を変えていく。そして彼女自身も―。おいしくてせつない、感動長編。−裏表紙より−
初めましての作家さんです。
この本を読んだ頃は、妙に食べ物系の小説を読むことが多かったので、他の作品と内容が混ざりそう・・。
まあ、これはちょっと変わった設定だったので大丈夫ですけど。
妙子が働くことになったのは、近江寮という名前の宿泊施設。東京にあるのですが、滋賀県出身の人のための施設です。話す言葉が関西弁なので読みやすいかと思ったら、関西弁でも滋賀県はちょっと違うようで、妙に気になってなかなか進まず。会話の場面では何度も読み返すことがありました。
妙子は行方不明になった夫を探すために東京に来たのですが、夫の知らない一面を知ることになって、落ち込むことも。それでも寮の人たちに料理を作ることで気が紛れていました。
寮には、安江という妙子と同じくらいの年齢の女性がいて、彼女が寮を任されていたのですが、料理が苦手で評判はイマイチでした。妙子のお陰で商売も上向いてきたことで、安江も妙子の夫探しに協力します。
二人の関係は、言いたいことを言い合ってケンカもしつつ素敵な感じです。昔からの知り合いのよう。たぶん、昔から知り合いだったらここまで仲良くはなれないのでしょうけど。
更に素敵だったのは、安江の母・ヨシ子。彼女はかなり痴呆が進んでいるため、空気を読めない発言が多いですし、意味のない言葉もよく話すのですが、時々人にグサッと刺さる鋭い一言を放つのです。
書き出してみようかとも思ったのですが、言葉自体はそれほどでもないので書くのはやめます。でも「なるほど」と思わされることが多く、読んでいても爽快でした。
このままサラリと読んでしまえるかと思ったら、最後の方で号泣してしまいました・・。なんか良いな〜人との関わりって、なんて思わされる作品でした。
↓ ランキングに参加中 ポチッ×2と押して下さるとうれしいです。


タグ:渡辺淳子