
西條奈加 著
「六花落々 りっかふるふる」
(祥伝社文庫)
「雪の形をどうしても確かめたく―」下総古河藩の物書見習・小松尚七は、学問への情熱を買われ御目見以下の身分から藩主の若君の御学問相手となった。尚七を取り立てた重臣・鷹見忠常とともに嬉々として蘭学者たちと交流し、様々な雪の結晶を記録していく尚七。だが、やがて忠常が蘭学を政に利用していることに気づき・・。蘭学を通して尚七が見た世界とは―。−裏表紙より−
ちょっと変わり者として見られていた小松尚七は、偶然出会った男と意気投合します。尚七はずっと「雪の形が見たい」と思っていたのですが、その気持ちを分かってくれたその男・鷹見忠常によって、その夢をかなえていきます。
御目見え以下という低い身分だったのですが、藩主の若君の学問の相手をするように言い渡された尚七。若君も尚七と同じようにあらゆることに興味をもち、色んな疑問を抱えて生きている人だったので、二人はすぐに打ち解けていきました。
雪の形を見るといっても、今と違って簡単に顕微鏡が手に入るわけでもなく、藩の力を借りずには実現しないことでした。若君のお相手をすることで、共に研究を進めていくことが出来たのです。
降ってきた雪を黒っぽい紙に乗せ、溶けない内に模様を写し取るという地道な作業。雪の形は色々あって、長年続けていくうちにたくさんの模様図を集めることが出来ました。
それを一冊の本にすることになり、尚七は喜んだのですが・・。
このまま、雪の形を写し取ったり、蘭学の勉強ばかりで終わってしまったら、これは何が言いたかったのか?と思ってしまいそうですが、そこから時代小説っぽい動きが。
忠常の動きと、若君の想い、そして尚七の庶民たちへの想いが痛くて苦しく感じる内容へと変化していきました。
刀を使った切り合いのような激しい展開は無いですが、静かな中にも激動があって面白かったです。
でも最後はすっきりと明るい終わり方をしてくれたので読んで良かったと思えました。
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