
葉室麟 著
「散り椿」
(角川文庫)
かつて一刀流道場の四天王と謳われた勘定方の瓜生新兵衛は、上役の不正を訴え藩を追われた。18年後、妻・篠と死に別れて帰藩した新兵衛が目の当たりにしたのは、藩主代替りに伴う側用人と家老の対立と藩内に隠された秘密だった。散る椿は、残る椿があると思えばこそ、見事に散っていけるもの――たとえこの世を去ろうとも、ひとの想いは深く生き続ける。秘めた想いを胸に、誠実に生きようと葛藤する人々を描いた感動長編。−裏表紙より−
この作家さんの作品を読むのは2作目。他にも評判が良い作品があるので、次はそれを読もうか?なんて思っていたら、作家さんが亡くなられたとの報道が・・。まだ60歳代なのに残念です。出来るだけ早く他の作品も見つけて読みたいと思います。
一度は国を離れた瓜生新兵衛が、18年という月日が流れてから戻ってきます。彼は、18年前に上役の不祥事を暴こうとして、追い出されるように国を離れたのですが、妻が亡くなるときに遺した言葉を胸に戻ってきました。
亡き妻の妹のもとに身を寄せることになりました。その家には甥である藤吾がいました。
久しぶりに戻った新兵衛が見た藩は、側用人と家老の対立が起きている状態でした。藩主を味方につけて自分が権力を握ろうと考えていたのです。
そんな不安定な状況の中、彼が戻ってきたことで、それぞれが思惑を抱えて動き始めます。
血なまぐさい事件も起こり始め、甥という立場の藤吾もどちらに付いていけば良いのか悩んでしまいます。藤吾が信じていた人物や信念が次々と覆されてしまい、藤吾自身も狙われるはめに。
始めは、新兵衛さえ戻ってこなければ・・と疎んじていたのですが、彼の真っすぐな想いに魅了されていきます。
始めのうちはよくあるお家騒動が描かれているだけなのですが、隠密活動を行う謎の組なんかが出てきて若干混乱ぎみになりました。この組も意味があったのか、最後まで必要性が感じられませんでした。
また、途中で亡き妻の視点で描かれるところが出てきたのも残念でした。もう亡くなっているのですから、遺された手紙などを読むような形であれば納得できますが、生きているかのように想いが描かれるのはちょっと興ざめでした。
これが描かれることでより細かい想いがわかるようにはなっているのですが、読者が想像するだけでも良さそうです。
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