
西條奈加 著
「まるまるの毬」
(講談社時代小説文庫)
親子三代で菓子を商う「南星屋」は、売り切れご免の繁盛店。武家の身分を捨てて職人となった治兵衛を主に、出戻り娘のお永とひと粒種の看板娘、お君が切り盛りするこの店には、他人に言えぬ秘密があった。愛嬌があふれ、揺るぎない人の心の温かさを描いた、読み味絶品の時代小説。−裏表紙より−
読み始めてすぐは、美味しい和菓子屋さん、しかも庶民に優しいお値段控えめな和菓子屋さんの日常を描いている話なんだろうと思っていたのですが、突然雰囲気が変わっていきます。
門外不出の有名な和菓子をそのまま真似して販売したのではないか?と疑いまでかけられてしまいます。毎日詮議にかけられる主の治兵衛。
どうなってしまうんだろうとハラハラしていると、更に治兵衛には何やら秘密がありそうだとわかっていきます。
確かにただ和菓子屋の日常を描いても盛り上がりに欠けるわけで、こうやって色々騒動があるわけだね・・と納得。
治兵衛の謎はすぐには明らかにされませんが、読者には何となく想像はつくようになっています。細かいところまではわからないので、それが明らかにされるのも楽しみで読み進めることになります。
途中、お君に良い話があったりして、この時代ならではの一筋縄ではいかない感じももどかしく、でも母親の娘を思う気持ちに感動させられ、祖父の優しさと叔父さんの力強さもあって、辛い話も全て明るい気持ちで終われる雰囲気になっていました。
出てくる人たちも良い人ばかりで、もちろん美味しそうな和菓子もたくさん出てきて、癒される話でした。
相手を気遣い過ぎて言いたいことが言えない主・治兵衛と娘・お永の関係が微笑ましくて特に気に入りました。その不器用な二人の間に立って、明るく元気に発言する孫・お君。みんな素敵でした。
シリーズにはなっていないようですが、ぜひ続きも書いてもらいたいです。
秘密が明らかにされても、まだまだ書くことはいっぱいありそう。
また彼らに会いたいです。
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