
西條奈加 著
「千年鬼」
(徳間文庫)
友だちになった小鬼から、過去世を見せられた少女は、心に<鬼の芽>を生じさせてしまった。小鬼は彼女を宿業から解き放つため、様々な時代に現れる<鬼の芽>―酒浸りで寝たきりの父のために奉公先で耐える少年、好きな人を殺した男を側仕えにして苛めぬく姫君、行商をしながら長屋で一人暮らす老婆、凶作が続く村で愛娘を捨てろと言われ憤る農夫、田舎から出て姉とともに色街で暮らす少女―を集める千年の旅を始めた。 精緻な筆致で紡がれる人と鬼の物語。−裏表紙より−
連作短編になっていて、4話までは小鬼が人の心に芽生える「鬼の芽」を吐き出させていく物語が続き、小鬼は天上の誰かに言われて、世の中を良くしようとしているのだと思っていました。
ところが、5話目になって時代が遡り、小鬼が民という少女と出会う場面が描かれたことで、これまでの話も実は全て一人の生まれ変わりなんだと気づかされます。
民が鬼の芽を芽生えさせる原因となった出来事が、本当に昔の日本で行われていたことなのかはわかりませんが、思わず顔をしかめたくなるようなことで、これは狂っても仕方ないと思えました。
そこからの小鬼と民の友情関係は痛々しいですが、心温まる物語で、最後は気づけば涙が流れているような、何とも言えない終わり方をしました。
ハッピーエンドとも言えるし、かわいそうでもあるし、でもこれで良かったのかもしれないとも思えます。これは、読んだ人それぞれ、感じ方が違うと思います。
私は心穏やかに読み終えることができました。「めでたし、めでたし」とは言いませんが、それに近い気持ちです。
苦しまなくて良くなっただけでもうれしくなりました。
鬼が出てくる時点でファンタジーなわけですが、普段ファンタジーを読まない人にも読んでもらいたいと思えるような素敵な作品でした。
この作家さんの作品はなかなか見つけられないのですが、早く探して読みたいと思います。
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