2016年07月26日

葉真中顕「ロスト・ケア」

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 葉真中顕 著
 「ロスト・ケア」
 (光文社文庫)


戦後犯罪史に残る凶悪犯に降された死刑判決。その報を知ったとき、正義を信じる検察官・大友の耳の奥に響く痛ましい叫び―悔い改めろ!介護現場に溢れる悲鳴、社会システムがもたらす歪み、善悪の意味・・・。現代を生きる誰しもが逃れられないテーマに、圧倒的リアリティと緻密な構成力で迫る! 全選考委員絶賛のもと放たれた、日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。

読む前からきっと重い話だろうと覚悟はしていたのですが、読み終わるとやっぱり重くて感想が整理できない状態になりました。


話は、2011年12月、<彼>に死刑判決が降る裁判の様子から始まります。<彼>はどうやら殺人を犯したようだということしかわかりません。ただ続いて何人かの感情が描かれている文章から察するに、この殺人によって救われた人と、怒りが収まらない人がいることはわかります。

そして次の章では、2006年11月へ。ここから<彼>が起こした事件の内容が明らかにされていきます。そして<彼>と表記されているのはこの中に出てくる誰なのか?動機は何なのか?が少しずつ明かされていくのです。


ミステリーだけではなく、高齢化社会について描かれています。家で介護することの大変さ、介護ビジネスの難しさ、社会システムの問題点などなど。

私自身は、介護をしたことが無いので、介護する人の大変さは想像するしかありませんが、中で描かれていた娘が母親を介護する様子は涙があふれて仕方ありませんでした。あまりにも壮絶で、娘さんの苦しみも、介護されている母親の苦しみも痛いほど伝わって、読むのが苦しいくらいでした。と言っても、実際に介護された方の気持ちなんて、経験していない私に理解できるわけないのですが。

更に介護ビジネスについて、老人ホームや介護施設などを経営している会社の社員の話もあります。その社員の言っていること全てに賛同するわけでは決してないですが、いくつかの部分では自分の携わる保育の世界と共通する所がたくさんあって、激しく共感してしまいました。

老人の介護をすることは、家族だけでは難しい。でも、それをビジネスにするとなぜか社会から白い目で見られる。現場を知らない偉い人たちが考えたルールを全部正確に守っていたらビジネスとして成り立たない部分がある。この辺りは本当にわかります。一般の会社がやるからには、利益がないと倒産してしまうのは当然のことで、福祉としてそれは変だ、ダメだと言うなら、それなりの資金を回してくれ!ってことです。予算は無い、でも介護はクリーンで無いと・・というのは矛盾しています。

利益を得るために何をやっても良いというわけでは無いですけどね。詰め込みすぎたり、職員の待遇がひどすぎたり、虐待したり、そういうことになるのは絶対にダメです。

今は待機児童の問題で、保育士の給料が安すぎる、なんて叫ばれていますが、介護士も本当に安いです。労働に見合わない職業ですよね?結局、彼らの善意に甘えている所が大きいと思います。


介護されている人が喪失感を感じて「早く死にたい」と考えるのは何となくわかります。我が子に迷惑をかけるなんて、想像するだけでも辛いです。でもだからといって、<彼>がしたことに賛同はしたくないんですよね。

でも気持ちはわかる・・・・・。

本当に難しい問題ですし、自分もどうやって気持ちを整理したら良いのかわかりません。正義ってなんでしょうね??

色々考えさせられた作品でした。とりあえず、福祉についてルールを決めている偉い人たちに読んでもらいたいものです。


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タグ:葉真中顕
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