
椹野道流 著
「時をかける眼鏡 医学生と、王の死の謎」
(集英社文庫)
母の故郷・マーキス島にある「法医学博物館」で突然過去の世界に飛ばされた、医学生の西條遊馬。わけがわからないまま、殺人事件の現場に居合わせたために投獄されてしまう。そこで出会ったのは、この国の皇太子ロデリック。彼は、父である王を殺した罪に問われているというのだが・・?そして、ロデリックの無実を証明するよう、遊馬に頼んできた人物とは―!?−裏表紙より−
この作家さんの本を読むのは2作目ですが、同じように面白い設定になっていて、気づけば話に引き込まれていました。しかも、登場人物たちが憎めないんですよね・・。
主人公は、法医学者を目指している、医学生の遊馬。この字を書いて「あすま」と読むのですが、漢字で書いてあると「ゆうま」と読んでしまうし、タイムスリップしてからは、カタカナで「アスマ」と書かれていて、今度は「すあま」と読んでしまうし、ややこしくて仕方ありませんでした・・私だけかな?
遊馬が過去に飛ばされてからは、怒涛の展開が。いきなり殺人現場に行きあたって、容疑者にされて投獄されます。でも謎の人物に助け出され、その人物からなぜ遊馬がこの時代に連れてこられたのか?を聞かされます。
結局、その当時の王族の相続問題に巻き込まれるような形ではありますが、殺人事件の調査をすることになります。法医学者を目指しているアスマにとっては良い勉強になるようで、黙々と、特に大きくパニクることもなく解決していきます。
まあこの謎解きははっきり言って大したことはないので、ミステリーとしてはイマイチなんですけどね。
ただ、昔の王族の内部事情のようなものを知ることができますし、何より王族の人たちが良い感じのキャラなんですよね。
特に3番目の王子が印象的でした。彼は、上に2人も男子がいるので、その当時のしきたりとして姫として育てられました。姫王子と呼ばれているわけですが、生まれてからずっと女装で過ごし、姫として扱われています。いつかは姫として他国へ嫁入りするのだとか。そんな彼に遊馬がそんな定めはつらくないか?と聞いたところ、国で作られているお菓子を渡してからこう返事をしました。
「これは、(中略)贅沢な菓子だ。我が国の大半の民は、この甘さを知らぬまま一生を終える。菓子など買う余裕がないからだ」(中略)「一方で、そんな民たちが納める税で、私は養われておる。(中略)すべて民のおかげだ」(中略)「ならば、私をここまで守り育ててくれた民の幸せのため、この身を捧げるのは当然のことであろうよ。王室に生を享けるとは、そういうことなのだ」
王族に生まれるなんて、想像もつかないですが、守られて育つだけに「民のため」という気持ちは強くなるのかもしれませんね。その覚悟に感動しましたし、ちょっと悲しい気持ちにもなりました。
まだ遊馬は現代に帰れないので、彼の成長を見届けるためにも、続きを読んでいきます。
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