
森沢明夫 著
「夏美のホタル」
(角川文庫)
写真家志望の大学生・相羽慎吾。卒業制作間近、彼女の夏美と出かけた山里で、古びたよろず屋「たけ屋」を見付ける。そこでひっそりと暮らす母子・ヤスばあちゃんと地蔵さんに、温かく迎え入れられた慎吾たちは、夏休みを「たけ屋」の離れで暮らすことに。夏空の下で過ごす毎日は、飽きることなくシャッターを切らせる。やがて、地蔵さんの哀しい過去を知った慎吾は、自らできることを探し始めるが・・・。心の故郷の物語。−裏表紙より−
この作家さんの作品は2作目。初めて読んだ作品と同じようにとても優しい文章で、優しい物語でした。さらっと読みやすく、短時間で読んでしまいました。
写真家志望の大学生・慎吾は、なかなか実力が認められずに軽いスランプに陥っていました。気分転換も兼ねて、彼女の夏美とバイクで出かけることに。トイレを借りるために立ち寄った山里の小さな店で暮らす母子に出会い、そこから彼らの人柄に惹かれ、夏休みの間を店の離れで暮らすことになりました。
山里での暮らしは、都会では味わえないことばかりで、2人ははまっていきます。何より、店のヤスばあちゃんと息子の恵三に心を癒され、たくさんのことを教えてもらい、逆に支えたりしながらの暮らしは新鮮でした。
恵三は、足が不自由であまり歩けないのですが、彼から教えてもらった川あそびの様子を写真に撮ることで、慎吾の方向性が見えたのです。
恵三は、店の前にあるバス停からバスに乗っていく子どもたちを地蔵のように優しく見送っていることから「地蔵さん」と呼ばれてみんなから愛される人ですが、彼には過去に悲しい出来事がありました。
それを告白されてからは、一層彼に惹かれていった慎吾と夏美でしたが、そんな幸せは長く続かないもので・・・。
前半の明るい雰囲気から一転、涙なしでは読めない展開が待っていました。私はそれを電車の中で読んでいたので、思いっきり泣けずにもやもやしてしまいました・・残念。泣かないようにするために流し読みするなんて!勿体ないです・・。
地蔵さんもヤスばあちゃんも本当に良い人で、何の欲もなく毎日心静かに暮らしている姿にほのぼのしましたし、憧れました。こういう心境になるまでには様々な苦労があったわけです。私もこういう風に穏やかに生きてみたいです。
最後まで静かな時が流れる優しい展開で、明るい希望がもてる終わり方でした。読み終わって幸せなため息が出る物語でした。
うまく感想が書けないのが悔しいです・・。
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