
伊吹有喜 著
「なでし子物語」
(ポプラ文庫)
いじめに遭っている少女・燿子、居所のない思いを抱え過去の思い出の中にだけ生きている未亡人・照子、生い立ちゆえの重圧やいじめい苦しむ少年・立海。三人の出会いが、それぞれの人生を少しずつ動かし始める。言葉にならない祈りを掬い取る、温かく、強く、優しい物語。−裏表紙より−
「外の世界は男の世界。女は何も知らなくていい」なんていう時代錯誤な考えを持つ由緒ある一族の話で、強く生きたいと願う女性と、それを頭ごなしに押さえつけてしまう男性という嫌な構図になっていました。
でも登場人物たちの懸命さは読んでいて心地よくて、みんな応援したくなるような人ばかりでした。
一見偏屈そうに思える一族の家を守る未亡人・照子。彼女は亡き夫の思い出の中に生きているような女性で、使用人からは慕われてはいますが、本人は無関心である意味世捨て人のような状態です。
母親から捨てられて、父親もいなくて祖父に育てられることになった少女・燿子。お金が無いというよりも、子育てに無関心な祖父のお陰で、服が汚れていたり体が汚れていたりしているため、同級生からひどいいじめを受けている彼女。勉強も追いつかなくて、学校に通うにもやめてしまいました。
一族の主人である父に田舎暮らしをさせられることになった少年・立海。体の弱い息子(跡取り)を心配して、田舎で過ごさせようというのはわかるのですが、更には伝統に従って女装もさせます。当然、いじめの対象になるわけで。彼の場合は病弱なこともあって、学校へは通わず、家庭教師をつけて勉強をしています。
この3人が照子が仕切っている田舎の家で出会い、それぞれを気にかけているうちに癒されながら過ごしていきます。
子どもの2人はお互いの事情など全くわかっていないのですが、どこか達観している部分もあって、子どもらしくない雰囲気すらありました。2人で過ごしているうちに子どもらしさを取り戻していくのを微笑ましく思いながら読みました。
そんな彼女たちを見ているうちに、照子も穏やかになっていくのが素敵でした。
静かな良い雰囲気の内容にほのぼのしているうちに、当然ながら一族のドン登場! まあこのまま穏やかに静かに終わったら何だったのか?だよね・・と思いつつも、あまりの理不尽さに怒りがわきました。
それでも子どもは強いもので、どうやら今後も前を向いて生きていけそうな感じ。そこだけは良かったと思えました。
立海の家庭教師が言った言葉が素敵だったので書いておきます。
「自立と自律」
自立、かおを上げて生きること
自律、うつくしく生きること、あたらしいじぶんをつくること。
嫌なことがあったときに目を閉じて下を向いてやり過ごしていた燿子に対して「強くなりなさい!」と教えた言葉です。どんな環境にいても強く生きていこうと思ったら乗り越えていける! 私も心に刻みたい言葉です。
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