
薬丸岳 著
「その鏡は、嘘をつく」
(講談社文庫)
鏡ばかりの部屋で発見されたエリート医師の遺体。自殺とされたその死を、検事・志藤は他殺と疑う。その頃、東池袋署の刑事・夏目は同日現場近くで起こった不可解な集団暴行事件を調べていた。事件の鍵を握るのは未来を捨てた青年と予備校女性講師。人間の心の奥底に光を当てる、著者ならではの極上ミステリー。−裏表紙より−
帯に「泣かずにはいられない」と書かれていましたが、「泣かずに」居られました・・・。泣くというよりも、嫌悪感が強くて、ずっと気分が悪い状態で読み進めました。
夏目刑事シリーズ第2弾で、「刑事のまなざし」の続編です。
夏目刑事の刑事らしくない雰囲気が気に入っていたのですが、この作品ではあまり彼の刑事らしくない部分は出てこなくて、ただただ変な刑事という扱いになっていました。
彼よりも、検事・志藤の方が重要な役目を果たした感じでした。この人も色々と抱えているようですが。きっと彼の話もまた出てくるでしょう。
今回の被害者となった男性・エリート医師は、始めは「エリート」と付く割には良い人なのかも?と思えたのですが、だんだん印象が悪くなっていきました。
最終的には殺されても仕方がない、とまでは言いませんが、それに近い感情さえ沸いてしまうくらい。
加害者やある意味、彼にひどい仕打ちをされた被害者たちがかわいそうで、罪を犯さないといけなかった彼らに同情してしまいました。
関係者のほとんどは医療関係の人たちで、実家が病院だから子どもに継がせようと必死になっていたり、当たり前のように継がされていたり、「お医者さんって人助けして立派な仕事で素敵」と気軽に言えないような苦しみを味わっている人たちばかりです。
金銭的に苦労しないで済む分、親からかけられるプレッシャーに耐え切れなくて壊れそうになる子どもや、なりたい物になれない金銭面の苦労がある子ども、医師になっても周りからの圧力に負けてしまう人など、読んでいて苦しい描写もたくさんありました。
相変わらず読んでいて暗く、重い雰囲気になっていく作品でした。
それでもまだ「医師」という自分とはかけ離れた世界の話だったせいか、今までの作品よりは重くなりすぎずに読み切ることができました。
次は何を読もうか? 今度はあまり間をあけなくても読めそうです。
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