
宮下奈都 著
「よろこびの歌」
(実業之日本社文庫)
著名なヴァイオリニストの娘で、声楽を志す御木元玲は、音大付属高校の受験に失敗、新設女子高の普通科に進む。挫折感から同級生との交わりを拒み、母親へのコンプレックスからも抜け出せない玲。しかし、校内合唱コンクールを機に、頑なだった玲の心に変化が生まれる―。見えない未来に惑う少女たちが、歌をきっかけに心を通わせ、成長する姿を美しく紡ぎ出した傑作。−裏表紙より−
初めましての作家さんです。
連作短編になっていて、それぞれの題名の頭には数字ではなく音階のド〜シの音が書かれています。つまり、7話で成り立っています。
話の中心となるのは、あらすじにも出てくる御木元玲という、同級生からはちょっとはみ出した存在の少女。彼女のクラスメイトたちに1話ずつスポットを当てて、話が描かれていきます。
1話目は、玲本人が主役となっています。偉大な母親がいる子どもは、同じ道に進もうとすると失敗したときの痛みも他の子どもより大きくなるわけで、玲も当然受かるだろうと思われていた音大付属高校の受験に失敗し、逃げるようにして女子高の普通科へと進みます。
同級生から何か言われるのではないか?という恐れから、彼女は周りと大きな壁を築いてできるだけ目立たないように、関わらないようにして日々を過ごしていました。そんな彼女を同級生たちも特に話しかけることも、いじめることもなく、何となく遠巻きにしていました。
ところが、校内合唱コンクールをきっかけにして、突然彼女に注目が集まります。そこから彼女がどんな風に変化していくのか?
1話目では、もしかして同級生たちとも関わるようになるかも?くらいの状態で終わります。
そして、2話目以降は彼女の同級生たちを1人ずつ主役にして描かれていきます。つまり、同級生から見た玲の姿がわかるようになります。時系列も戻ったり進んだりするので「1話目のあのとき、この子はこんなことを考えていたのか」と確認できて、より深く彼女たちの気持ちに近づける感じがしました。
とはいえ、私にとっては高校生の頃なんて数十年前のことで、なかなか共感するまでには至りませんでしたが・・。
それでも同じ女性として、友達との関係や将来についてどう考えていたか?など、思い当たる部分は多く、懐かしいような痛いような気持ちになりました。
女同士の友情って、大人になってもややこしいんですよね。そんなときに、みんなで同じ目標に向かって進むことでスムーズにいくのは良いなと思えました。こういう青春!って感じの体験ってある意味面倒ですけど、大事なことなのかも。私には無かった気がするな〜。
初めて読んだ作家さんですが、読みやすかったので他の作品も探して読んでみようと思います。青春ものばかりでは辛いですが。
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