
辻堂魁 著
「風の市兵衛」
(祥伝社文庫)
柳原堤下で、武家の心中死体が発見された。旗本にあるまじき不祥事に、遺された妻と幼い息子は窮地に陥る。そこにさすらいの渡り用人唐木市兵衛が雇われた。算盤を片手に家財を調べる飄々とした武士に彼らは不振を抱くが、次第に魅了される。やがて新たな借財が判明するや、市兵衛に不穏な影が迫る。心中に隠されていた奸計とは? "風の剣”を揮う市兵衛に瞠目!−裏表紙より−
初めましての作家さんです。
ネットで面白いと評判だったので、気になっていました。久しぶりに、時代小説らしい話を読んだ気がします。良い作家さんに出会えました。
主人公の唐木市兵衛は“そろばん侍”という珍しい武士で、そろばんを武器に勤め先の家計をやりくりします。こんな紹介の仕方をすると、腰にさした剣も重そうに思えるようなナヨナヨした武士を思い浮かべそうですが、表紙の絵を見ればわかるように、剣の腕も確かな武士です。
「風の市兵衛」という題名でもわかると思いますが、風の剣と呼ばれる剣術をふるいます。しかもかなりの腕前で、彼が雇われた旗本を助けるために剣をふるう様子はとてもかっこよかったです。風が吹くような自然ででも鋭い剣だそうで、想像しただけでゾクッとします。
物語の冒頭で、まず旗本であり妻子もある武士と、夫のいる武家の妻との心中死体が発見されます。本来なら旗本は取り潰しになる所が、それまでの勤め方など評判の良い人だったこともあって、密かに息子に家督が譲られました。とはいえ、まだ8歳という幼い息子で、まだまだお城にあがるわけにはいかないため、収入はほぼありません。
そこで市兵衛が雇われたわけですが、彼の調べで、借金があること、これまでにあまりにも蓄えがされてきていないことがわかり、それを詳しく探っていくうちに、亡き主人の心中事件の謎が浮かび上がってきました。
ほぼ面識がないと思われる2人がなぜ心中などしたのか、そして何に使って借金ができたのか。調査する中で次々と浮かび上がる怪しい影・・。
彼の調査が進む度に、謎が深まって行って、早く真相が知りたくて次々と読み進めてしまいました。
痛ましい事件ではありますが、遺された息子の姿に救われた気がしました。
市兵衛のシリーズはたくさん出版されています。次も早く買って読もうと思います。
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