
葉室麟 著
「風かおる」
(幻冬舎出版)
父・佐十郎の元に届いた果たし状。鍼灸医の菜摘は、重病の身で果し合いに出かけようとする佐十郎を止めようと、弟・誠之助と男装の美少女・千沙と共に差出人の正体を探りはじめる。調べを進めるうち、かつて佐十郎と出世を競い、今や藩の重鎮となった三人の男たちに辿りつくが・・・・・・。なぜ養父は、妻敵討ちにでなければならなかったのか。明かされる、養父の知られざる過去とは? 人が生きることの哀歓を描く、胸を衝く傑作時代小説。−出版社HPより−
初めましての作家さんです。時代小説を久しぶりに読んでみたくて、新しい作家さんにも出会いたくて、、「本が好き」で献本申し込みしました。
帯の文章を読むと、恋愛物っぽかったので心配でしたが、読み進めるとミステリー色が強くて安心しました。
鍼灸医をしている菜摘が治療に呼ばれて行った先に、十年会っていなかった養父の姿がありました。養父は「妻敵討ち」の旅をして帰ってきた所でした。「妻敵討ち」とは、妻と駆け落ちした相手を討つことです。親や子の敵討ちはよく聞きますが、妻でもあるんですね。この時代ならではです。
不治の病で、手の施しようもない状態になっている養父が「妻敵討ちは謀られたことだった」と言い、敵討ちをさせた相手と果し合いをすることになっていると聞き、菜摘は何とかして止めようと調査を始めます。
部屋住みで暇な弟と彼に想いを寄せている千沙に頼んで、何とか事情を知ろうと聞き込みをしてもらうのですが、なかなか真実が見えてきません。
この2人の調査は読んでいてももどかしくて、チラッと話を聞いて、改めて菜摘が同じ人に話を聞く、という何とも手間のかかる状態。そこまでしても、結局3人にはほとんど何もわからず。残りページが少なくなった頃、やっと家に戻ってきた菜摘の夫・亮がほぼすべてを解き明かします。サッサと帰ってきたらいいのに!と思ってしまいました。確かに出張先での調査は必要だったんですけどね・・。
菜摘の弟と千沙のことなど、事件と関係ない内容も多く、もっとすっきり短く濃い内容にもできたのではないかな?と思ってしまいました。
また、1人犬死としか思えない死に方をした人物もいて、彼の存在は哀れでした・・。何も殺さなくても・・。まあこの物語はほぼすべてがそういう気持ちにさせられうのですが。
この時代の恋愛はどうしても、当人同士の望みどおりにはならないので、悲恋が多いですね。ある意味一途だった、キレイな恋だったと言えなくもないですが、やり方が納得できませんでした。誰か1人が真実を話していれば、何か一つきっかけさえあれば、違う結末があっただろうと思うと辛かったです。
初めて読んだ作家さんでしたが、文章は読みやすかったです。時代小説らしくない気もしましたが。軽く読めるので、時代小説に慣れない人にも読みやすいかもしれません。
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