
薬丸岳 著
「ハードラック」
(講談社文庫)
二五歳にもなって日雇い仕事すら失い、「大きなことをするため」闇の掲示板で四人の仲間を募った仁は、軽井沢で起きた放火殺人の汚名を着せられてしまう。なぜおれを嵌めた? 信じられるのは誰だ? 手探りで真犯人を探す仁、闇世界の住人たち、追う刑事。物語は二転三転し、慟哭の真相へと向かっていく。−裏表紙より−
この作家さんの作品はいつも重いテーマで書かれていて、深く考えさせられる何かがあるのですが、今作はちょっと雰囲気が違いました。帯に“薬丸岳の新境地”と書いてあったのが納得できる内容になっていました。
話に一気に惹きこまれる面白さは健在で、誰が犯人なのか?どうしてこんな事件が起きたのか?次々出てくる謎に答えが知りたくて、次々ページをめくってしまいました。
お陰で、ページ数が多い割に早く読み終えることができました。
25歳で無職になり、揚句に最後の貯金まで無くなってしまい、明日からどうやって生きていけば良いのか?先の見えない状況に陥ってしまった仁が、闇の掲示板に「何か大きなことをしよう」と書き込んだことから、事件が動き始めます。
集まったのは、バーボン、ラム、テキーラ、そして鈴木の4人。本名も何も素性を明かすことなく、ある大きな犯罪を計画していまう彼ら。実行した後に気づけば殺人事件に巻き込まれていて、仁は容疑者となってしまいます。
4人の中に仁を嵌めた人物がいるはず、と独自に調査を始めるのですが、誰のことも信用できず、どうやって調べたら良いのかもわからない状態なので、なかなか思うように進みません。
次々あがる犯人像に読んでいる私も推理を変化させることになり、最後はなるほどこの人だったか・・という結末。まあちょっと疑ってはいましたが。
表紙をじっくり見ていたら何となくわかるかも??
動機を知るとかわいそうになりますし、仁を含め他の人たちももう少し何かきっかけがあれば、違う人生があったのではないか?と思うと泣けてきます。
誰かが手を差し伸べていれば違ったのに・・。ある意味、誰にでも仁たちのようになる可能性があるということでもあり、ぞっとさせられました。
最後まで面白かったのですが、この作家さんでも書けそうな物語だったので、ちょっと物足りなさもありました。今度は重いテーマの作品をまた読んでみようと思います。
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