
薬丸岳 著
「死命」
(文春文庫)
若くしてデイトレードで成功しながら、自身に秘められた女性への殺人衝動に悩む榊信一。ある日、余命僅かと宣告され、欲望に忠実に生きることを決意する。それは連続殺人の始まりだった。元恋人の澄乃との皮肉な再会。犯人逮捕に執念を燃やす刑事・蒼井にも同じ病が襲いかかり、事件の展開は衝撃の結末を―。
この作家さんは重いテーマで描かれる作品が多いので、覚悟して読み始めた所、今回はどうも違う雰囲気でした。でもやはり、テーマになっているのは“命”なので、内容的には重かったです。
ただ、余命僅かだと宣告されて、「よし、今まで我慢していた殺人をやっていこう!」と決心する気持ちは全く理解できませんし、その衝動に駆られた彼の心情や行動を細かく描写された場面では、顔をしかめずにはいられないエグさ、グロさがありました。
もう1人の人物である、刑事の蒼井の気持ちも全く共感できませんでした。そこまで刑事であることにこだわる彼の生き方は不器用すぎて、苦しんでいる場面も顔をしかめながら読んでいる自分がいました。
そんな内容なのに、ものすごく話に入り込んでしまい、気づけば夢中になっていました。寝る時間を削っても読んでしまいたくなる作品で、2人の男性が1つの事件を通して、どんな出会い方をするのか、どんな余命を生き抜くのかがとても気になりました。
こういう作品では、最期の場面を描かずに、周りの人物が墓参りなどして「あ〜、亡くなったんだな」と知らせられるパターンが多いのですが、これはきちんと描いてくれたのでとても良かったです。
彼らは壮絶な人生を生きて、どんな想いで死んでいくのか、ぜひ読んでみてもらいたいです。
読み終わったら、かなり気持ちは落ち込みますけどね・・・。
この作家さんは間を空けないと辛いのですが、次はどんな作品を読もうかな??
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