
坂木司 著
「ショートケーキ。」
(文春文庫)
やりきれないことがあるたびに、友だちと食べるケーキの味は格別(『ホール』)。バイト先でケーキを買ってくれる天使たち。その素顔と理由は(表題作)。経理で不機嫌そうな表情の彼女が、唯一笑顔を見せる瞬間を見てしまい(『騎士と狩人』)。特別で、でもいつも変わらずおいしいショートケーキをめぐる連作集。−裏表紙より−
「ホール」「ショートケーキ」「追いイチゴ」「ままならない」「騎士と狩人」の5編収録されている連作短編集です。
子どもの頃、「ショートケーキ」というのはホールケーキを8等分などにカットしたケーキのことだと思っていました。本当はイチゴの乗ったスポンジケーキのことだったんですよね。だったらなぜ「イチゴショート」というのかは謎ですが。
でもショートケーキと聞いて、イチゴの乗ったケーキを思い浮かべるのは日本人だけだとか。名前の由来は諸説あるそうですが、簡単に短い時間で作れるケーキだからということのようです。この本だけで色々調べてしまいました。
この作家さんの連作短編は面白いです。3話くらいまでしっかりつながりがあって、1話目に出て来た人や場所が2話目には別の人物の目線ですが出てきて、3話目も同じくつながっているのに、4話目になると急に誰の話?つながりが急になくなるのね、となります。でも最後まで読むと、3話目に出て来た人がちらりと登場というか「こういう人がいたんだよ」的に語られて、おーつながりあった!と嬉しくなります。
そして最後の話は2話目に関係がある人物の話になっていたりして、主役だった話では分からなかった人物像が見えてきたり、他の人から見たらこういう風に見えているんだとわかったりしてより楽しめます。
全ての話が面白かったのですが、特に気に入ったのは「ままならない」です。これだけがちょっと系統が違う話ではあります。ただ、ケーキにまつわる部分もあって全くつながりがないわけではないのが良い感じ。
母親になるということは、幸せで楽しいことだけれど、孤独を感じたり、自分の時間が無くなることにストレスを感じたりします。そんな生活を送っている3人の母親たちが、今自分がやりたいことを叶えるという内容です。
それぞれの子どもたちをお互いに見ながら、1人ずつちょっとした休暇をとります。ささやかなぜいたくが本当にささやかで、しかも1人になると子どものことばかり考えてしまう母親の様子がほほえましかったです。
母親って偉大ですし、子どもって不思議な存在ですね。
ケーキって小さい頃から特別感があって、見た目も可愛いし魅力的に感じていました。でも思い返してみると実はそれほど食べるのは好きではなかったのかな?と思います。見るだけで充分というか、食べ始めると半分くらいで何となく要らないなと思っていました。食べきりますけどね。今でも並んでいるケーキを見るのは好きです。食べなくても良いけど「美味しそうだな」とは思います。
ケーキって私にとっては芸術品みたいなものかも。
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