2025年01月28日

柚月裕子「ミカエルの鼓動」

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 柚月裕子 著
 「ミカエルの鼓動」
 (文春文庫)


北中大病院の西條泰己は、手術支援ロボット「ミカエル」での心臓手術を成功させ、院内での地位を不動のものにした。しかし病院長は、心臓手術の名手・真木一義をドイツから招聘。難病の少年の治療方針を巡り、最先端医療か従来の術式かで二人は激しく対立する。そんな中「ミカエル」にある問題が発覚して―。−裏表紙より−


「ミカエル」と名付けられた手術支援ロボットを巡る問題がテーマになっています。

医師の西條は「ミカエル」を使っての心臓手術を成功させ、ミカエルの第一人者になっていました。もちろん所属する大学病院での地位も確固たるものにしていました。

病院長もミカエルを使う最先端技術を推進しているようでしたが、突然、ドイツから心臓手術の名医・真木を呼び寄せて病院で雇うと宣言しました。

納得がいかない西條。そんな中、西條を慕ってミカエルを使用した手術を行っていた若手医師が自殺したことを知ります。更に記者からミカエルのある問題について言及されます。

そして難病の少年が入院し、その治療方針を巡って、西條と真木は対立することに。



大きな流れとしてはこんな感じです。ページ数も多く、ずっしり読み応えのある作品ではありましたが、読んでいると不快なところが多かったです。

とにかく西條が「ミカエルに何が起きたんだ!?」と悩み始め、自分で使ってもわからず、誰に聞いても教えてもらえず、病院での地位も危うくなるし、病院長は冷たくなるし、夫婦仲もあやしくなるし・・・と不幸を一気に背負い込んだかのようなウジウジぶりで、何とも言えないプライドや権力に固執する感じとか、読んでも気持ちは理解できませんでした。

そんな医師1人のプライドよりも人の命の方が何倍も重要で、命を助けるためならあらゆる手を使ってほしいのに、どちらかというと後回しのようになっているのがイライラしました。

病院長ももっとはっきり言えばいいのに、絶対的権力をもっているかのように描かれている割には、西條に気を使っているのかきちんと説明しない。結局彼は病院の利益しか考えていないということなのでしょうけど。


最終的な手術についてはまあこれで良かったようには思えましたが、それまでの部分が長すぎて途中ダレてしまいました。

もっと削れる部分があったような気がします。


それとも、そういう削れそうな部分が無かったら、西條の苦しみが理解できないのか? 読んでも理解できなかったですけど。


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タグ:柚月裕子

2025年01月23日

買った本

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 近藤史恵 著
 「おはようおかえり」
 (PHP文庫)


お気に入りの作家さんです。題名の読み方を勘違いしていましたが、内容は面白かったです。


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 柚月裕子 著
 「ミカエルの鼓動」
 (文春文庫)


なかなかずっしり重い内容でした。とにかく長かった・・

2025年01月17日

椹野道流「時をかける眼鏡  宰相殿下と学びの家」

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 椹野道流 著
 「時をかける眼鏡  宰相殿下と学びの家」
 (集英社文庫)


マーキス島を脅かした疫病の流行は、遊馬たちの活躍でどうにか食い止められた。しかし人智を超えた災難に対し、自国があまりに小さく無防備であると痛感した国王ロデリックは国の行く末を案じ、「民の教育」についての夢を遊馬に語る。疫病で封鎖された集落で、遊馬たちが行った授業の評判が良かったことに触れ、「再度彼の地に赴き学び舎を造れ」と命ずるのだが!?−裏表紙より−


シリーズ9作目です。

前作でいよいよ観光のスタートか?と思っていたのですが、そう簡単にはいかず。というかその話は置いておいて・・という状態。

復興のための資金を集めることも大事ですが、国として人々が学ぶことはもっと大事ではないかと考えた国王。国の将来のことを考えたら、少しでも勉強ができた方が良いアイディアが浮かびますし、確かに大事なことです。


そこで、子どもたちに学ぶ機会を与えるため、学校を造ることにしたわけですが、まずは前作で疫病を食い止めた集落でやってみるようにとアスマに命じます。

アスマが教えるわけにはいかないので、教師を選んで連れて行きます。ただこの教師が問題でした。


教師が問題というか、この世界の認識が問題なわけですが。

彼女は子どもの頃に起きた事件で、その集落の中で唯一生き残った子どもでした。私からすれば「運が良い子ども」とか「親が命がけで守った大事な子ども」だとかいう認識にしかなりませんが、この世界ではなぜか「ノロワレ」と呼ばれ、忌み嫌われます。

悪の手によって生き残されたに違いないというわけです。つまり、悪の世界に好かれた子ども。

そういう考えになるのか・・と唖然としました。


その点について、彼女を見ただけでわかるようなことではないので黙っておけばいいのに「教師として正直でいたい」という彼女の希望により、集落の人たちに告白してしまいます。

そうなると関わりたくなくなるわけで、大事な子どもたちを学校に通わせるわけにはいかない、となり、いきなり授業がままならない状態になりました。


これはなかなか根深くて大変だ・・と思っていたら、このシリーズらしく意外とあっさりと解決するので良かったですけど、そんなに簡単に考えが変わるかな?とちょっと納得はいかない感じでした。

でもそこにひっかかっていたら最後にもっと大きな出来事が!

それについては書かずにおきますが、え〜!?まさか! 状態でした。

どうなっていくんだろう・・・かなり気になります。

早く続きが読みたいです。


<時をかける眼鏡>
「医学生と、王の死の謎」
「新王と謎の暗殺者」
「眼鏡の帰還と姫王子の結婚」
「王の覚悟と女神の狗」
「華燭の典と妖精の涙」
「王の決意と家臣の初恋」
「兄弟と運命の杯」
「魔術師の金言と眼鏡の決意」

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2025年01月10日

白蔵盈太「あの日、松の廊下で」

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 白蔵盈太著
 「あの日、松の廊下で」
 (文芸社文庫)※電子書籍


「殿中でござるってばァ・・」そう発することになってしまった旗本・梶川与惣兵衛は、「あの日」もいつもどおり仕事をしていた。赤穂浪士が討ち入りを果たした、世にいう「忠臣蔵」の発端となった松の廊下刃傷事件が起きたひである。江戸中を揺るがす大事件の目撃者、そして浅野内匠頭と吉良上野介の間に割って入った人物として一躍注目されるようになった彼は、どんな想いを抱えていたのか。江戸城という大組織に勤める一人の侍の悲哀を、軽妙な筆致で描いた、第3回歴史文芸賞最優秀賞受賞作。−出版社HPより−


初めましての作家さんです。

日本人なら知らない人はいないであろう有名な「忠臣蔵」の元となった「松の廊下刃傷事件」のことが描かれています。


忠臣蔵のドラマは色んな物を見てきましたが、「忠臣蔵」としては前段階の部分になるので大抵はサラッと流されてしまう部分です。浅野内匠頭が吉良上野介に小言を言われている・・我慢を重ねたけど限界!・・松の廊下で切りつける!・・「殿中でござる」と止められて・・一方的に切腹させられお家断絶。

この一連の流れが10〜20分くらいでサラッと流されてしまいます。

忠臣蔵としてはその後の浅野家の家臣たちの様子がメインになりますから仕方ないのかもしれませんが、そういえば何で浅野内匠頭は吉良上野介に切りつけたんだろう? いじめられたっぽいけどどうしていじめられたんだろう?と聞かれたらよく知りませんでした。

まあ興味もなかったんですけどね。

この作品では、なぜこの事件が起きることになったのか?をメインに、そこまでの2人の様子が描かれています。この話を進めていくのは「殿中でござる」と叫んで浅野内匠頭を止めた、梶川という旗本です。

彼の目から見た2人の様子が描かれます。


ここに描かれていることが全て本当のことなのかはわかりませんが、もしこれが事実なのだとすれば、吉良のことも浅野のこともイメージが変わりました。

吉良はもっと我儘で、自分を中心に世界が回っているかのような自己中的な人物だと思っていました。下の人間を見下して、常に俺は偉いんだから言うことを聞け!というタイプかと。

浅野のことは田舎の出だから、江戸という場所に圧倒されているせいで大人しくなってしまっている人物だと思っていました。言いたいことを言えないからこそうっぷんがたまって爆発したのかと。


ところが意外と吉良は周りのことも考える人物だったとわかりましたし、浅野はおとなしいばかりではなく意外と言いたいことを言っていることがわかりました。

ではどうして事件は起こったのか?

簡単に言うとお互いの気持ちのすれ違いだったということです。言いたいことを言っているようで、結局は今でいう会社の上司と部下みたいな関係なので、上司は上司で気を使ってやんわりと注意しますし、部下は部下で言いたいことの半分は飲み込んでしまう。

そんな2人の間に立って関係を取り持とうとしたのが梶川です。彼の苦労は読んでいてもしんどくなるほどでした。ただもう少し何とかならなかったんだろうか?とイライラする部分もあります。

でもまあ彼は彼で中間管理職的な立場というか、浅野が部下ではないので更に大変な状況。


もっと早めに誰かに相談出来ていればこんな事件は起きなかったのかもしれません。そうなると「忠臣蔵」もなくなるわけですが。


個人的にあまり興味が無かった事件ですが、意外と楽しく読めたので良かったです。とりあえず当事者2人の印象は大きく変わりました。


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タグ:白蔵盈太

2025年01月06日

12月のまとめ

キッチンつれづれ (光文社文庫)キッチンつれづれ (光文社文庫)
2話ほどよくわからないというか好みではない物がありましたが、全体的に面白かったです。キッチンを舞台にした物語たち。キッチンと言ってもいろんな景色があります。
読了日:12月04日 著者:矢崎 存美,福澤 徹三,永嶋 恵美,大崎 梢,新津 きよみ,福田 和代,近藤 史恵,松村 比呂美


香君4 遥かな道 (文春文庫 う 38-5)香君4 遥かな道 (文春文庫)
一つの穀物に頼り切ってそれを武器に国を治めることの頼りなさと恐ろしさ。いや〜よくここまで考えて話が膨らみました!神ではないのに神のように崇められる香君という存在も面白かったです。オリエは良かったけど、アイーシャも幸せになってもらいたいと強く思いました。
読了日:12月10日 著者:上橋 菜穂子


六人の嘘つきな大学生 (角川文庫)六人の嘘つきな大学生 (角川文庫)
1人の視点で描かれているのに急に放っておかれる感じがして読みにくい部分がありました。就活ってしたことないですが、なかなか過酷なんですね。過ぎてみればみんなあっさりしているようですけど。選ぶ側も同じような服装と髪型の人たちの中から選ぶのって大変そうです。途中から誰が犯人でも良いと思ってしまいましたし、読むのも疲れました。
読了日:12月13日 著者:浅倉 秋成


ショートケーキ。 (文春文庫 さ 49-5)ショートケーキ。 (文春文庫)
ショートケーキという題名なのに何でホールケーキ?と思ったらなるほど・・読んで納得です。ケーキってそこまで好きではないですが、見た目の可愛さにはテンションが上がります。連絡短編でいろんな人がちょこっと関係してきて最後まで面白く読めました。
読了日:12月17日 著者:坂木 司


バタフライは笑わない (文芸社文庫 NEO き 1-1)バタフライは笑わない (文芸社文庫 NEO)
青春だね〜というには重い内容でした。いじめとかいやがらせの域を超えて、犯罪だと思うな。自分で解決してしまおうとするのは大人から見れば馬鹿らしいですけど、子どもだったら思い詰めてしまうのは仕方ない気がします。ちゃんと助けてくれる大人がいて良かった。読み終えてホッとしました。
読了日:12月20日 著者:北川 ミチル


石礫 機捜235 (光文社文庫 こ 45-2)石礫 機捜235 (光文社文庫)
ワクワクする内容でほぼ一気読みでした。・・がだんだんと機動捜査隊らしくなくなっているのは残念です。活躍してくれるのはうれしいですけど、他のシリーズとの差がなくなっていく気はします。
読了日:12月26日 著者:今野敏



全部で6冊でした。最後までのんびり読書な一年でした。まあいいですけどね。

特に印象に残ったのは「香君4」「ショートケーキ」です。

posted by DONA at 15:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:まとめ